投稿者 シラセ 伝説のオロシャ地蔵が眠る土地の特定に成功しました。ついては、共に命がけのシベリアオフ探に参加してくれる隊員を募集してます。メール待ってます。 ※「オロシャ地蔵」とはロシアの民話です。お爺さんが売れ残りの毛皮の帽子を六体の地蔵に被せてやると、その晩地蔵がやってきてお爺さんのベッドを囲んでコサックダンスを踊り、その重みで床が抜けお爺さんは死んでしまったという話です。 オフ探募集BBSの書き込みである。この下の投稿は「日帰りツチノコ探検隊ぼしゅー!」というガキの遠足の類だし、その下のも「埋蔵金GETしましょ。女性歓迎」と、はなからオフ会だけが目的らしい。シラセ氏の書き込みだけがこのBBSの本来の目的に添っている。 空港で初めてシラセ氏に会った。初老の紳士といった趣で、陰鬱な眼が印象的だった。 「白瀬です。よろしく」 と一言言うと、あとは僕に目もくれず広げた地図をにらみ始めた。 「あのう、他の隊員は?」 「君だけだ」 空路ハバロフスクへ、そこから終着駅チェリャビンスクまでのシベリア鉄道7461キロを走破してもなお、僕達の間には全く会話がなかった。話しかけても例の陰鬱な眼で一瞥されるだけだった。 ツンドラを廃車寸前のジープで駆ける。やがて車を棄てウラル山脈の奥に分け入る。ガイドもポーターもいない、二人きりの陰気な探検である。 「このへんでいいだろう」 暗い雪洞の中で白瀬氏が呟いた。僕は確信した。 「あのう、オロシャ地蔵って作り話なんでしょう」 「当然だ。ロシアに地蔵はない。君も馬鹿だな」 「なぜ嘘を?」 「馬鹿ならさほど罪悪感も沸かない」 彼は拳銃を取り出し、僕の眉間に狙いを定めた。 「な、なんの真似です」 「火の車の中小企業の社長として自殺するより、探検隊の隊長として悲劇の遭難死をしたかったんだよ。せめてもの夢さ」 「し、死ぬ気なら、最初から一人で来ればよかったじゃないか」 「一人だけじゃ隊長にはなれないだろう。さ、隊長だけ死んではまるで間抜けだ。さらば」 彼はしかし、手がかじかんで引き金がうまく引けない。虚をついて手にしたツララで襲いかかった。 投稿者 川口 …そして、彼の菩提を弔うため六体の地蔵を建てた。されど地蔵は踊らない。私を床下の奈落の底にいざなってはくれない。床下が。堕ちてゆきたい苦しいくるss マーダー告白BBSの書き込みである。この書き込みだけが、BBSの本来の目的に添っている。 |