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「ねえねえ。今日はどうする？ 仕事上がったら映画観に行く？」 |
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「いくいくー」 |
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「うーん、どうしよっかなあ。お給料日前でちょっと苦しいのよねー」 |
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「じゃ、スーパー右翼御用達の映画館『テアトル一水』行こうよ。“神職さん神前プライス”実施中だから、巫女三人で行けばチケット代はお気持ちでいいんだよ。いつもみたいにずうずうしく5円とか1円払って観ればいいじゃん」 |
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「うーん、お給料日前だから1円玉すらないのよ。貯金もないわ」 |
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「どんな社会人だよ。あんたの社会生活は根本的なところでかなり間違っている気がするよ」 |
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「そんなわけだから今日はごめんねー」
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「えー」 |
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「しょうがないなー」
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「ちなみに、テアトル一水ではなにを上映してるの、今？」 |
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「『日本沈没』だよ」 |
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「あら、それならこの社務所で観られるわよ」 |
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「え、どうして？」
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「あのね、宮司には内緒よ。こないだ社務所のテレビにスカパーを引いて、いろんな専門チャンネルと契約したの。だから30年前のオリジナル版『日本沈没』ならテレビで観ることができるのよ」 |
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「えー、マズくない？ バレたらまた宮司に水ごりとかさせられるよ」 |
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「大丈夫よ、社務所の入り口近くに『ママがきたセンサー』を仕掛けてあるから。宮司の動向を察知して、奴が来る前にテレビを消しちゃえばバレないわ」
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「そんなことにばっかり投資してるから給料がなくなるんだよ」 |
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「あっ、武士道専門チャンネルでちょうど今からオリジナル版『日本沈没』が始まるみたい！」 |
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「しかもなんなのよ、武士道専門チャンネルって！」 |
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「なんなのよって……藤岡弘、とスティーブン・セガールの出てる映画だけをえんえんと放送し続ける武士道専門チャンネル『AKAFUJI』がなにか？」
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「うわ。さも当然、みたいな顔で答えてますけどアナタ」 |
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〜鑑賞後〜 |
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「いや、いいね！ すっごく面白かったね！」 |
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「うん、よかったわ！ リメイク版よりもオリジンのほうが面白いんじゃない！？」 |
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「いい、悪いというよりも、多分別物なんじゃないかな。たとえ同じタイトルで似たようなストーリーでもね。だってさ、あのキャストじゃなきゃ、あんだけ燃えるストーリーを紡ぐことは出来ないよ」 |
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「同じ名前でも、KENZOと奥崎謙三くらいちがうね」 |
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「いや、そんなにはちがわんだろう。その両者は単位が光年くらい離れてる」 |
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「主人公・小野寺俊夫を演じた藤岡弘、さんの濃い存在感も素晴らしかったけど、脇の俳優陣もかなり光ってたわよね」 |
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「そうそう。なんといっても、総理役の丹波哲郎！ 自衛隊の備蓄食料が110万食と聞いて、『東京の人口は……きみぃ！』と絶句するシーンとか、観てるこっちもマジ絶句！」 |
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「日本が沈没するまでの十ヶ月のあいだに全国民の難民受け入れをめざす総理が『問題の本質は、きみぃ！ 一億一千万の人間の数だよ！』と絶叫するシーンとかもかっこよかったわ。きみぃ！」 |
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「『十万がだめなら一万でもいい！ 一万がだめなら千人でもいい！ 千人がだめなら百人でもいい！ いや、一人だっていい！』って台詞もかっこよかったよ！ きみぃ！」 |
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「暴力海洋学者の田所教授もアツかったよね！ 演じているのは小林桂樹。『科学者にとってもっとも大切なものは……勘です！』って、うおー、かっけー！ 子供の頃にこの映画を観てたら、アタシ理系に進んでたかも」 |
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「『わしは、日本が好きだった！ 総理、日本人を頼みますぞ！』そう言って日本列島と心中する道を選んだラストシーンにも涙！ 田所教授だい好き！」 |
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「それにしてもこの作品って、まさに日本ならではのパニック映画だったと思うな。映画の中でさ、富豪のじーさんが坊さんとか学者とか、三人の識者を集めて今後の対策を練らせるシーンがあったじゃない」
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「エヴァのMAGIみたいにね」 |
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「それでさ、三賢者によって導き出された最適な回答が「なにもしないほうがいい」なんだよね。何もしないほうがいい……日本がどんどん沈んでいくというのにさ」
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「アニミズムや自然崇拝を源流に持つ神道的世界観をバックボーンに持ち、その後仏教の末法思想や老荘思想の無為自然、生き恥を晒すまいとする近世の武士道精神、あるいは近世以降の国学的死生観・日本観を身につけて生きて、そして死んできた日本人ならではの回答よね。すごく興味深いわ」 |
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「リメイク版ではどうなっているんだろうね、このマギ回答のシーン。気になる部分ではあるな」
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「……あっ、そうだわ。『日本沈没』にならって、あたしも新しい映画企画を考えたわよ！」
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「なに？ 言っとくけど筒井康隆の『日本以外全部沈没』なら既に映画化が決まってるよ」 |
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「ううん、『朝鮮沈没』！ ゴロツキ国家北朝鮮とチンピラ国家大韓民国の位置する朝鮮半島が特にこれといった意味もなく沈んでいくんだけど、世界各国は今まで朝鮮系移民がそれぞれの国で犯してきた悪逆非道を鑑みて、『なにもしないほうがいい』という決断を下し難民受け入れを拒否するの」 |
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（また始まったか……） |
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「そして逃げ場を失った朝鮮人は『ここは日本海じゃなくて東海ニダー』とかわけのわかんないことを叫びながら次々と日本海へと投げ出されるのよ。あはは。で、アホみたいに辛いキムチの温熱効果でしぶとく生き続けながら海流に乗って対馬上陸をもくろむ朝鮮人どもを殲滅するために自衛隊の戦闘機がスクランブル……」 |
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「……あっ、『宮司がきたセンサー』が鳴ってるよ」 |
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「きゃっ！ 待って待って！ テッ、テレビ消して！ あっあっあたしっ、ちょっ、ちょん……ちがくて、韓国の方のわるくちとかぜったい言ってませんからっ！ しぱたっ、しぱたっ」 |
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「……ごめん、うっそー。はは、ウズメ姐さんが暴走しすぎたから、ちょっと止めようと思って。それにしてもパニくりすぎ！ 驚きすぎて“おどろきしぱた”までしてたし。超ウケたよー！」 |
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「なあんだ、うそなのね……でね、聞いて聞いて、国内の在日朝鮮人どもが『同胞を救うニダー』とかほざいて万景峰号に乗り込んで海に出るんだけど」 |
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「うわ、ぜんぜん止まんないし」 |
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「そこを自衛隊のメーサー銃が狙いすましてドーン！ どかーん！ 万景峰号ちんぼつー！ ざっぱーん！ 日本に巣食う在日も一掃ー！ あはは。あはははは」 |
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「あ、今度は本当にセンサーが鳴ってる……」 |
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「それで、朝鮮人が沈んだ海が妙に赤いから、あれー、赤潮かなー、なーんて思ったら実は朝鮮人が家から持ち出したキムチのせいで海が赤くなってんの！ ぷーっ！ 他に持ち出すものなかったのかしら朝鮮人！ しょっぼーい！ あははは。あははははは」 |
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「あーっ！ 姐さんうしろー！」 |
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「あははは。もうその手には……えっ。あっ！？ 宮司っ！？ きゃーーー。やめて……やめてそれだけは！ いっ……いやーーーっ」 |
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「……宮司さんに連れて行かれちゃった……」 |
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「さようならウズメ姐さん……また、地球のどこかで……」 |
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