タイの観光名所　その1　法医学博物館 　場所：シリラート病院法医学研究練2階 　おすすめ度：★ 　すすめませんよ、こういう所は。人格が疑われます｡なにしろ展示してあるものといえば殺人鬼のミイラ、奇形胎児 のホルマリン漬け、ちぎれた手足のホルマリン漬け、事故死した人の死体写真(しかも焼死とか、列車に轢かれたとか、 アリに喰われるとか、とんでもない死にざまばっかり)とか、グロすぎなんです。趣味わるいです。 最悪です。行くもんじゃありません。ちなみに、僕がタイ観光で最初に訪れたのはこの博物館だったりします。 　僕はこういうのが好きなUG野郎じゃないですよ。むしろ苦手です。実際、博物館で何度も吐きそうになりました。 展示のことごとくがやばすぎなんです。やばすぎです。やばすぎなんですが、やばいやばいと言いつつもこの小さな博物館を2周もまわる 頃には(まわるなよ)胎児だろうが人間の頭部の切断ホルマリン漬けだろうが平気の平左になってしまいました。 慣れって怖いなあ。 　そして3周もまわる頃には(まわるなよ)展示にも少し飽きてきて、今度は周りの見物客の反応を観察するという 楽しみを見出しました。 　お昼休みにぶらりとやって来た(博物館と病院と学校が一つの建物になっているらしいです) タイのアンニュイ女子校生たちは、脳みその断面を指差して何やら タイ語でサワディーサワディー論じた後、けらけらと朗らかに笑っていました｡惚れそうです｡ 　お昼休みの息抜きにぶらりとやって来た態のサラリーマンは、殺人鬼の使用したノコギリをしみじみと見つめて いました。きっと、上司のことについて想いを巡らせていたのだと思います｡ほどほどに！ 　カオサン系の日本人旅行者は、展示を見て「よくできてんなー」としきりに感心してました。 でも、その頭が妙に大きな胎児、本物ですよ。言わぬが花｡ 　展示内容の解説を二、三ほど。 　なんといっても目玉は博物館の別名にもなっている殺人鬼シーウィーのミイラ。この人はどうしたことか人間の内臓を不老長寿の薬と勘違いし、 道ゆく人をとっ捕まえては内臓をひっぱり出してむしゃむしゃと食べていたというオッチョコチョイです。 そのオッチョコチョイぶりが災いし、警官に捕まってロウで固められてしまったとさ。おしまい。 　戦慄する、というよりも「ああ、なんかタイってかんじだなあ」とほのぼのしてしまう話ですよね。しませんか？ 　異常胎児のホルマリン漬けはけっこうキツいものがあります。胎児の死体とはすなわち水子なので、 水子の霊は怖いので、きちんと供養してやればいいのになあと思っていたら、一体だけ食べ物や小銭が お供えしてある水子ホルマリン像がありました。家族の方が供えたものなのかどうかは分かりません。 その水子は心なしか半跏思惟のポーズをとっているようにも見えました｡南無。 　死体写真はグロさNO.1です。三周目でようやく直視できるようになりました。 　笑えたのは「カニにかじられた死体写真」。いや、いま日本でこうして字にすると全く笑えないのですが、 感覚がマヒしたグロテスク博物空間の中においては爆笑ものでした。だって、「焼死」とか「轢死」とかみんな 堂々たる死にっぷりだというのに、一人だけ「カニにかじられた」なんて書いてあって、しかもその死体のおじさん、 いかにもカニにかじられそうなヌケた死に顔してんだもんなあ。 　 　ここを観て感じたことは、タイ人はグロものに強い、ということです。博物館で顔を青くしているのは日本人 ばかりで(西洋人は元から来ない)タイ人は平然とした顔で、しかも子供連れで死体写真を見てまわったりしているのです。カルチャーショック。 　博物館の下の階に病院の待合室があるのですが、そこの受け付け横に死体写真が貼り付けてあるのにも 驚きました｡どうやら「今月のグロい死に様特集コーナー」みたいなものらしいです。なんだこの国！　 なんで外来患者にこんなものを見せる必要が！？ 　明日は我が身、という諺がタイにはないのか！？ 　そういえば、日タイ合作の『ウルトラマン』では、ゴモラは頭の皮を剥がれてグロく殺されたりするそうで。そういう お国柄なんですかね。仏教国なのに。 　いや、むしろ仏教国だから、かもしれませんね。生老病死も流転のうちですか。 　なんてかんじで、タイでひとつ悟れました｡ありがとうシーウィー博物館(薦めませんが)！