タイの観光名所　その3　カオサン通り 　場所：街のふきだまり 　おすすめ度：★★★ 　一泊60バーツ(約180円)なんていう法外に安い安宿が立ち並ぶ、アジア屈指の安宿街がカオサン通りです。 多くの貧乏旅行者がずぶずぶと沈没してしまう場所としても有名で、ここにくればそういったドロリ目サカナ目の 旅行者たちをつぶさに観察することができてとても楽しいです。僕は｡ 　カオサン通りといえば、妙なTシャツが売っていることでも有名です。笑えたのは大きく「密売」と漢字で書かれた Tシャツ。しかもいかにも「僕たち売ってます！　買ってます！」　ってかんじの長髪グラサン外国人が実際に着ていたり するのだから既にシャレになってません。その他いろいろ、トンデモTシャツの詳細は 「アジアのいかしたＴシャツ」さん http://www.geocities.co.jp/Colosseum/3564/index.html に載ってます｡笑えます｡ 　白昼堂々「偽造IDカード作ります！」の看板があちこちに立てられているのもカオサンならでは。学生証なんかは30分 くらいでスピード偽造してくれます。これなら忙しい人でも大安心、そしてこれさえあれば42歳のおやっさんでも ユースホステルに安価で泊まれて大満足なのだ！ 　なのだ！なんて断定してはみたものの、実用に耐え得る精巧なものかどうかは未確認です。 記念に作っておけばよかったかなあ。 　たくさんの豪快さんが闊歩しているので、通り抜けるだけでも楽しいこの通り｡現地の人よりもみすぼらしい格好で よたよた歩く日本人がいるかと思えば、現地の方も負けじとばかりに、いろんなものを打ったり吸ったりしすぎた らしいおばさんが路地裏でひと悶着起こしていたりします。人生の縮図です。こまった部分だけの｡ 　で、こんなにこまった混沌安宿街だというのに、 西洋人は西洋人、日本人は日本人できちんと固まって暮らしているんです｡おもしろいなあ。 　今回、ぼくはまっとうなホテルに泊まりました。常々バックパッカーに憧れていて、いちどカオサンみたいな 所に泊まってみたいと思っていたんですけど、度胸と胃腸が強くないのでなかなか果たせずにいました。 が、カオサンをじかに見て「やっぱここには泊まんなくていいや」としみじみ感じました｡だって、いいですか、 旅人とはいわば異国の空を吹き抜けていく風である以上、こういうところで澱んでいてはいけないと思うのです｡ そう僕らは風。まわりの澱んだ空気を吹き払うために自ら吹き抜けてゆくことを望んだ風。そんな一陣の風である 僕らに立ち止まることは許されないのです｡そう僕らは風！　 　ってなんだか歯がキラリと光りそうなさわやか文章は僕の芸風にあわないのでもうやめます。とにかくそういう 旅論なんです。みだりに棲みついてはいけない。 　あやしいバーであやしく酒を飲んでいたら、あやしい日本人にあやしくからまれました。 髪も髭もその他いたるところがもじゃもじゃなあやしい人でしたので、からまれついでに色々話を聴いてみると、 やっぱりカオサンに沈没してしまった人なのでした。 世界を見てまわろうと一念発起し日本を発ったものの、カオサンに住み着いて既に三ヶ月も経ってしまったとか。 そしてやっぱりドロリとした目をしていました。回遊魚の目です。 　やはり旅は回遊魚ではいけない。僕らはそう、 泳ぐのをやめたら死んでしまうサメだかなんだか、そのあたりのするどい海のギャング系のワイルドな目でもって キビキビとまわりの漁場(観光名所) を漁り、これと思ったエモノ(お土産)を鋭い牙(外貨)でむさぼり、そして颯爽と去っていく(五分前には集合場所に集合) というスタイルこそ旅だと思うのです｡ 　旅に出て旅を想う｡これは素敵なことですね。きっとこのようにして 旅行者は旅人へと成長していくのだと思います｡ありがとうカオサン通り！　ありがとうカラんできた酔っぱらい！ 　と、回遊魚も止まると死ぬんだそうですね。あれ、そうするとサメは止まっても平気なんでしたっけ。あれ？　あれ？ 　えーと、だれか、僕に『魚のひみつ(学研)』を貸してください。