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昨日、『ここがヘンだよ日本人』で霊能力者がコテンパンに叩かれてましたね｡ 霊能力者がダイアナ妃を降霊する、という実験をしていたのですが、西欧合理主義に肩までどっぷり つかった外国人と、一連のカルト宗教騒動でこういったものに過敏に拒否反応を示すようになった 日本人たちは一様に否定してました。アフリカ人だけが肯定していました。 ダイアナ妃を降ろした依代が息子の王子の名前を聞かれてロクに 答えられなかったこと、イギリス人であるダイアナ妃が日本語で喋っていることなどを挙げて この人たちはインチキだ、人を騙してお金を取っているぞ等々、非難の嵐でした｡ ああこいつらわかってねえなあ、と僕が思うのは、降霊というのはインチキであってインチキでないという点｡ そもそも降霊という現象、僕はありえないと考えます｡みなさんの多くも同じ考えかと思います｡ 降霊のあるなし論争なんて、議論にすらなりません。 第一そんな、死者が出てきてしゃべるだなんておっかないこと、信じたくないです。 降霊自体はありえない。その点を押さえた上で以降の文章を読んでくださいね。 外国人やテリー伊藤たちが見落としているのは、霊能力者(の多く)は降霊という自分の行為を信じている、 という点なんです。 降霊とトランス状態と呼ばれる特殊な精神状態の間には密接な関係があり、トランスに入った人間はいわゆる「神がかり」 の状態になります｡そこでは自己の意識は奥へ追いやられ、代わりに常態では無意識層に潜んでいた憑依副人格が顔を出してくるのです。その深層意識が語る言葉こそ託宣であって、ダイアナの言葉であって、霊能者 の作為の手の及ぶことのない言葉です。したがって その言責は 霊能力者本人には無い、というか責任なんかとりようがないのですそんなもん。つまり結果的にはインチキなのですが、 依代本人にとっては決してインチキであるという自覚はないのです。 インチキどころか、彼女らはいついかなる時も自在にトランスに入れるよう 厳しい修練を重ねてきたプロフェッショナルでさえあります。彼女らはプロであり、インチキでないという自負、プロのプライドを持って いるからこそああいった場に出て来たはずです｡それをよってたかって、霊能力者側の抗弁の意味も解さず一方的にこき下ろす外国人の図というのは観ててムカつきました。 トランス状態で前後不覚に陥っている(と思われる)霊媒師を罵ってみんなで嘲笑するなんて、 プロに接する態度として最低すぎです。 例えるなら、外人さんにタコを握ってくれ、と言われてアイヨッと握って出したら「デビルフィッシュナンカキャントイートネ！」 と怒鳴られた寿司屋の親方いわくべらんめえ、といったかんじでしょうか。なんか違う気がします。違うな｡もっと無知で無作法っすね。 結果的にインチキならインチキと弾劾されてもしょうがないじゃないか、という意見もあるかもしれませんが、それもどうか と思います｡無意識の世界というのは今だ未知の部分が多く、心理学者さえ「なぜこんなにピタリと当たるのだ」 と首を捻るほどの腕利きシャーマンがいるのも事実です｡たしかに「特定の人物が降りているわけではない」 という点ではインチキですが、その点だけをとらえてインチキと一笑に付すのはちょっと難しいかと｡ ですから、トランスに関する知識をえた上で、 なんでトランスに陥った人は時折非常に鋭い発言をするのだろうね、不思議だよね、 という疑問から議論を出発させるべきと考えます。それと、シャーマンのプライドを傷つけないよう、こっそりと放送すべきとも 考えます｡ 大学でユタ(沖縄のイタコ兼拝みやのような職業)の成巫過程に関する講義を取っていました。 講義によれば、 「ユタの成巫過程とは、危機的場面の解決・克服に失敗し、心的葛藤による持続的ストレスによって 心的エネルギーを消耗させ、人格統御水準を弛緩させて心身の障害におちいった個人が、近親者の示唆や 既成ユタの指導のもとで、シャーマニズムの信念・価値体系の文脈に即して自己の心身症状を意味付け、 (中略)特異な治癒状態へと回復することにより、霊的職能者として地域社会に受容され、アイデンティティ を獲得し、以後は持続している症状をハンジを求めて訪れるクライアントに帰属させることによって心身状態を 維持しつつあらたな地位・役割に適応していく再社会化過程である(大橋英寿教授『社会心理学各論』レジュメより抜粋)」 とあります。沖縄のユタの場合、多くのケースが幼少時、青年時に何らかの精神的危機に陥り、 社会からドロップアウトをしてしまいます。しかしユタの修行によって自己の心神喪失状態に「カミ」という観念を使って 納得のいく説明をつけることで精神を安定させ、ユタとして社会に復帰するというシステムとなっています。 これは、頭がかわいそうな人は即通院！ 即病人！ という現代の医療体制よりずっと 優しい共同体システムだと思います｡ 興味深いことに、ユタはお客さんが来ないと病が再発してしまうことがあるんですね。なぜなら、 降霊と称してトランスに入る行為がユタの精神のバランスを保つことにつながるからなんです。つまり、ユタは依頼者 の心を癒すと共に、自分自身をも癒しているわけなんです。おんもしろいですよね。 さておき、霊能力者がみんなこの過程を経ている、とはもちろん思いません｡金目当てのサギ霊能力者のほうが むしろ多いのかもしれません。しかし、このような「本物(自分が霊能力者と自覚している、という意味で)」 の霊能力者の存在を無視し、沖縄や日本の精神文化、社会機構の歴史をも無視し、何万人が観ているかもしれない テレビで 「日本ハコンナコトシテイルホド暇ナクニジャナインダヨ、コンナノイラナインダヨ」などとほざくチリ人女性に、僕は憤りを感じます｡ 無責任なこと言うなよお前。あったまきた。 最後に｡ 僕はたぶん、あの場に出て来た人たちはヤラセのインチキ霊媒師ではないと思います｡自分を「霊媒」であると 信じているプロだと思います｡霊能力者本人が自分の力を信じていて、その人たちの元に霊媒を信じている依頼者が集う｡ 依頼者とは、死者しかすがる相手がいない可哀相な人かもしれない。そんな人たちが降霊を目の当たりにし、 そこで悩みが解決することもある。プロの仕事なので当然ギャランティーは発生する。 依頼者は納得できる金額の霊能者を探せばいい｡ みんなニコニコ。それでいいじゃないか、と僕は思います｡ あーあ、またやっちゃった。長文で｡ 放送の内容と異なっている点があれば教えてください｡ カッカしながら観てたものですから｡ しょせんはバラエティー番組、とわかってはいるんですけどねえ。 |