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ヒモロギくんは、バカSFと呼ばれる小説を読んで、こんなのいくらでも書けんじゃんよ、と思うに至った｡ 調子に乗ったヒモロギくんはバカSFファンタジー小説『イエロー・サブマリン』の執筆に取り掛かろうとする。 卒論の執筆計画提出日が迫っているというのに、ヒモロギくんときたらばかばかしいことにしか脳みそを使おうとしない。 −西暦20××年、とくに核戦争とかは起こらなかったが、都市化が進むインドでは遂に市販カレー粉が売り出さ れ開発競争が激化。「7000種類のスパイスと9億人の笑顔」が謡い文句のドラヴィダ社の新製品カ レー粉「アムリタ」は空前の大ヒット商品となる。しかし、主成分のバイオターメリックとリンゴとハチミツがふとした はずみで融合反応を起こし、各食卓のお鍋の中のカレーが大爆発、大量のカレー粉がインド上空に飛散する。 季節風によってあまねく世界中に運ばれたカレー粉は大気圏を覆い、太陽の光を遮り、スパイシーな大気に 人類の目は常に充血。こうして人類の苦難の時「黄色の時代」が幕を開ける…… 主人公：名前未定 クシャトリア階級の家に生まれた青年｡文明崩壊後はエア・シェイカー(※1)として生計を立てる｡ 既婚で子持ち｡カラテが得意。ヒンズー教。自慢のカイゼル髭に触られるとキレる。 敵：スマイル共和国 大気中に飛散したミスリチン(※2)、そしてあたり一面まっ黄色、というサイケな景色に中枢神経を刺激され、 第二次ヒッピームープメント到来｡ 無軌道なヒッピーどもをまとめあげた驚異のカリスマMr.スマイル(仮)はスマイル共和国をカリフォルニアに建国する。 彼はラリラリなヒッピー兵の武力を背景に人々に平和と愛を強要し、逆らう者は皆殺しという恐怖の独裁政権を 打ち立てる｡そして、遂にはヒッピーの聖地インドへの集団巡礼団「ヒッピー十字軍」を組織、ガンジス侵攻を開始 したのだ！ キーパーソンというかキー牛：聖牛ナンディー 主人公の家の周りを徘徊する野良牛。主人公がカレー大気の吸いすぎでラリラリしていると、どこからか彼を呼ぶ声が。 振り向けばつぶらな瞳の野良牛が一頭｡そう、この牛こそ世界に一匹の喋る牛ナンディーなのだ！ ナンディーは主人公にヒッピー十字軍の脅威を伝え、彼らと戦うことを命じる｡ 「モーモモー(そなたこそシヴァによって選定されし救国の戦士だ。怖れるな。牛ヴェーダ(※2)の力もて、 我も力を貸そうぞ)！」 この聖牛の声、主人公にしか聞こえない、なおかつカレー粉でラリラリしている時しか聞こえないので、 奥さんは聖牛の声とはただの幻聴で、したがってナンディーはただの野良牛だと思っている｡そして実際そのとおりである。 (※1) 大気中に多量のカレー粉が含まれているので､ごはんをしばらく放置しておくとカレー粉が堆積してカレー味になるという、その点においてのみ便利な世界。しかし、それでは時間がかかるため、実際にはごはんをブンブン振り回してカレー粉を強引に付着させる 「エア・シェイク」という作業が必要｡この作業を迅速に行い、なおかつ適当な味加減にするためには 相当の技術とカン、そして強靭な肉体が必要で、これを生業とする者をエア・シェイカーと呼ぶ｡ (※2) 幻覚物質。遺伝子操作で作られた通常の五倍の大きさの「バイオターメリック」に含まれている｡ ナツメグにも含まれている。 (※3) 牛どもの間に口伝で伝えられているというのんきな聖典。 未来におこる出来事なんかが伝えられていて、たまに当たる｡ だんだん世界観が構築されてきました。インド人VSヒッピー。 うーん、バカ風小説にはなっても、やっぱりバカ小説にはなれないかなあ。 |