6月14日(水)  山頭火編

 あー、やばいです。やばいやばい。こないだわずらった風邪は治ったんですが、 咳がコンコン止まりません。これぞ今はやりの結核に違いない。やばいやばい、しぬしぬ。

 でも、かかったらかかったで、結核(その他血を吐く病気)って私的には文士のやまいといったイメージがあるので、かっこいいです。
 派手に吐血喀血出血サービス、金タライに三杯吐けば赤色吐息、病人垂涎の決めゼリフ 「あめゆじゅとてちてけんじゃ」を唱えてみても、折しも梅雨の真っ只中、代わりにもらったデンデン虫、 そんな失意のうちにみじかい生涯をひっそりと終えたいと思います。 ただいっさいはすぎてゆきます。


 この世に生を受けておきながら何も残さず死んでゆくのは心残りなので、せめて辞世の句でも詠もうかな。 そうしようかな。

 咳をしてもひとり (ヒモロギ 22才 病人)

(評) 俳句は五・七・五、短歌は五・七・五・七・七。これは最低限のルールです。しかるに問題外の作品です。


〔改稿〕 咳をしたらふたり (ヒモロギ 22才 病人)

(評) 五・七・五。何もわかっていませんね。おまえはビスケットか。


〔改稿〕 咳をしたらやっぱりひとりだった (ヒモロギ 22才 病人)

(評) にほんごがわかりますか? もうおくってくるな。


〔改稿〕 咳がおさまってきた (ヒモロギ 23才 病人)

(評) かかりつけの医者に言え。脳みそのな。



 尾崎放哉の句はカッコいいなあ、ということをいいたくてこんな一人芝居をコンコンいいながら書いているわけ なんです。自由律の句って五・七・五と違って飾りだてがないので、ひたすら直球勝負、こんなもん天才にしか 書けません。カッコよすぎです。

 ノド飴を舐めていたら咳もおさまってきました。いつまでたっても血を吐く気配がないので、結核じゃないですね。 俗世よりへだてられし隔離病棟というやつに未練が残りますがしかたない、明日からまたイヤな病気をうつしたりうつされたり する俗世でもって日々の営みを永永と続けていきます。

 では一句。

 イソジンがないノド飴なめる (ヒモロギ 22才 妖怪好き)


 本歌取りこそが日本文化という観点から、どこまでもパクり続けます。
 コンコン。