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カレーばっか食ってます。ナンとかは手づかみで食わざるをえないのですが、意外とお腹は調子いいです(この時点では)。 ははは、インドおそるるに足らず(この時点では)！ 日中は疲れをいやさんがため、主にホテルでうだうだと日記を書いたりゾンビ童話を書いたりTV(えんえんとインド人が歌ったり踊ったりする、どこかおかしいMTV)を観たりして過ごしました。なにしろ、この日の夜には寝台車に乗る予定で、更にその寝台車というやつが果たしてほんとうに寝られるものなのかどうか皆目見当がつかないため、なるべく体力を温存せねばならなかったのです。 本当は一等車に乗りたかったのですが満席で準一等車にあたる寝台車しかとれず、それがどのようなものなのか友人が問い合わせると、最初は「二人で個室」という話だったのが、次に聞くと「八人の個室」となり、更に聞けば「八人ごとになんか仕切り？ みたいなの？ があるよ」というように、聞くたびどんどんグレードが下がっていったそうです。インド人めー。 駅の一番はじのホームまでてくてく歩いてゆきます。 「旅行者をぜんぜん見かけないねえ」と友人に言えば、友人は 「ふつうの旅行者は飛行機を使うんだよ」とこちらを見ずに言うのです。この人は最後まで飛行機で行きたがっていたのですが、交通費が飛行機に比べてずっと安いのとホテル代が浮くというだけの理由で僕が寝台車にこだわったことを、少し恨んでいるようです。 まあ、貧乏旅行者ならごまんと乗っているだろう、仲良く日本人どうし群れよう日本人の習性ー、と思いを巡らせているうちにホームに到着。列車を見やれば、なんか、窓枠には格子のみ。風通しよすぎ。蚊がぶんぶん。インド人ぎゅうぎゅう。横になるスペースまるでなし。照明はなし。中はまっくら。みんなこっちをにらんでる。暗闇で眼だけが光ってる。もしやこれがこれがこれから乗る寝台車！？ ころされる！？ と本気で怯えていたら、どうやらそれは二等寝台車だったようで、とりあえず安心。僕らの乗る寝台車には明かりがついていましたよ。よ、文明開化！ 安心して照明コウコウ冷房ギンギン文明開化の寝台車に乗り込めば、一車両まるで仕切りなし、四方八方どこをむいてもインド人、日本人どころか外国人旅行者の影もまるでなし。そして、あ、蚊が飛んでる！ そして、あ、友人が僕をにらんでる！ 三段ベッドになっていまして、下の段の席にいるガンジーみたいなお爺さんとお近づきになり、ポツポツとお話などしました。やあ、これが旅のだいごみ、土地の人と触れ合えてよかったネ、飛行機なんかではこうはいかないよネ！ と友人に親指を立てたこぶしをグイと出し、片目をつぶってみせます。 その隙におじいさん、ごそごそと何をやっているかと思えば、自分の荷物とベッドの支柱をチェーンロックで固く固く結び付けています。そういや「とにかく荷物に注意！ チェーンロック必須！」って『地球の歩き方』の「列車の旅」の項に書いてあったっけ。でも、持ってないし！ インド人のなかに日本人が二人、ってめちゃくちゃカモだし！ ドアも仕切りもまったくないから、盗まれほうだい逃げられほうだいだし！ 友人が呪詛をこめた眼で僕をにらみすえてるし！ 敵だらけだし！ 僕は一番上の段で寝ることにしました。一番上の段に荷物を置けばとりあえず安全だからです。やったー、頭いー、と早速荷物を上げたところ、自分の寝場所がなくなりました。 ザックを枕にし、スーツケースを抱き枕にして、横向きになって寝ればどうにか寝られました。盗まれると困るのでクツは履いたまんまだし、絶対ダニの温床に決まっているのでシーツも毛布も使いません。これじゃあ今夜は眠れそうにないな、やはりキレイ好きでハイソサエティーな僕にバックパッカーな旅行はムリだな、と身の程を知りつつ、ウォークマンで筋肉少女帯の『日本印度化計画』なんかを聴いていたら、あらまびっくり、すやすや眠れました。いけるじゃん。 いやはや、「掟やぶりの飛行機移動」をモットーにする筋金入りのバックパッカー各位から見れば、「なんともヌルい旅行記よ！ 二等車上等！」と怒られそうですが、すいません、僕はデリケートだし、体のつくりも君たちとはきっと違いますから。君たち、腎臓が左右に五個ずつついていたりするんでしょう？ 腸を伸ばせば地球を二周り半ほどの長さなんでしょう？ インド人に続いてバックパッカーをも敵にまわし 周囲は既に敵だらけ おとこヒモロギ 外に出たれば十億の敵 (インド人九億六千万人＋世界のバックパッカー ＋現実生活の敵＋326＋326のファン＝十億) 幾多の敵をむこうにまわし 明日はいったい何処へゆく 明日はいずこに風が吹く 次回 『ケンカ腰インド見聞録』、「ガンジスには十億一人目の敵」、 「ガンジスには十億一人目の敵」の巻。 コレラがこわくて、カレーがくえるか！(きめゼリフ) |