『渡る世間は鬼ばかり』、略してワタオニについて語るべき友がいない、というのが僕の悩みです。誰も観てやしないんだもんなあ。昔はワタオニ仲間が部活(弓道部)の先輩にいたのになあ。あの頃はよかったなあ。

ヒ「あ、おはよっす先輩」
先「おお、ヒモロギか。お前昨日……」
ヒ「あ、『渡る世間』っすね。観ました観ました！　あれ！　ひさ子のやつ！」
先「そう！　ひさ子ムカつくよな！　絶対ムカつくって！」
ヒ「あれじゃ泉ピン子の立つ瀬がないですよねえ」
先「ピン子は一度ひさ子に一度がつんと言ってやればいい！」
ヒ「でも、そんなことをしたら姑の赤木春江のやつが黙ってませんよ先輩」
先「そうか、くそう…」
　先輩、拳を握り締めて肩をワナワナ震わせる
ヒ「先輩、ピン子はああやって耐え続けるしかないんでしょうか？」
先「くそう、納得いかねえ！　ガシンガシン」
　先輩、握り締めた拳でマキワラを打ち、やり場の無い憤りをマキワラに叩きつける
　上手より、主将登場
主「おいお前ら、金曜になるといつも泉ピン子の話題で盛り上がりやがって！　練習中だぞ！」
　ヒモロギ、先輩、頭をかきつつ弁明しようとするが、それを遮るように主将が怒鳴る
主「練習しないなら矢取りに行け！　それと罰として礼の後に一休がけ！」
ヒ･先「そんなー。とほほー」
　舞台暗転。夕暮れの道場に場面転換
　先輩、下手よりぞうきんがけをしながら現れ、そのまま上手に去る
　先輩が上手に去った直後、上手から同様にぞうきんがけをしながらヒモロギ登場
ヒ「せんぱーい」
　叫びながら下手に消える。すぐに下手から先輩がぞうきんがけをしながら登場。
先「なんだー？」
　先輩、そのまま上手に消える。以下、その繰り返し。
ヒ「俺、思うんですけどー」
先「あー」
ヒ「ひょっとして大物になるんじゃないですかー」
先「誰がー」
　下手からヒモロギ、上手から先輩が同時にぞうきんがけをしながら現れ、舞台中央でピタリと止まり、二人顔を見合わせる。
　お互いを指差しあいながら声をそろえて言う。
ヒ・先「えなりかずき！」
　舞台暗転。幕引き。

　事実に基づいたオチはさておき、ゆかいな学校生活が懐かしいなあ。
　青春の思い出の一頁、そこに「渡る世間は鬼ばかり」「ピン子」「えなりかずき」といった単語群で検索をかけてヒットするのは、この地球上で僕と先輩(ほんとは二人いました)だけだと思います。

　ト書きなのは、今日『イーハトーボの劇列車(井上ひさし)』を読んでマネしたくなったからから、という単純な理由のためです。うまく書けないや。