今日は屋根の雪おろしをしました。祖父に「このままでは、このままでは屋根がつぶれてしまう……」などと、実に深刻に、あたかも地球の一大事であるかのごとく眉間にシワを寄せて言われたため、『ファンタシー〜』プレイで徹夜明けにも関わらず僕の御身は屋根の上ですよ。手にしているのはバイオリン？　いえいえ、ほんの雪かきスコップです。

　屋根より落ちた雪がその屋根の高さまで堆積しているため、登るのも降りるのも実にらくちん。うちの肥えに肥えたる飼い犬さえもほうっておけば屋根に登り、眼下の通行人を見下ろしてはわんわんと吠え立てます。
「こらこら、おまえはしょせん家畜なのだから、人様のつむじを見下ろす位置から吠えてはいけないよ」
「わんわん」
「やあ、しかし眺めがいいなあ。たまには屋根の上もおつなものだなあ」
「わんわん」
「ははは。屋根から滑り落ちてやんの。雪がなければお前の五臓六腑はほどよくはじけ、大地をきれいな赤に染めていたことだよ」
「わんわん」
「また登ってきたか、五臓六腑は大丈夫かい。んー、しかし屋根の上はほんとに気持ちがいいなあ。おい犬、我ら二人してこの場にしばしたたずみ、この美しき雪景色を堪能しようじゃないか」
「わんわん」
「あー、だけど寒くなってきたな。一旦下に降りてストーブにでもあたろう。みかんも食べよう」
「わんわん」

　といったかんじで、屋根の雪にヒトとイヌ、哺乳類二種の足跡をペタペタつけただけであって、当然雪は全く片付かず、祖父のシワが南極のクレバスのごとく一層深くなったものですよ。そんなわけで、僕はけっきょく難局雪下ろしを強制され、犬はけっきょくその身を寒さにけいれんさせながらも庭を駆け回りました。雪玉を投げてやると美味しそうに食べていたので、たぶんこの犬はばかなんだと思います。

　以上、人畜無害のほのぼの雪国にっきでした。
　結論は「ばかは高い所が好き」です。みなさんはどうですか？　好き？