3月5日(月)


 更新がとどこおっています。年度末は飲み会のたぐいが多くて忙しい、あんまり寝ていないので体調がおもわしくない、マンガ喫茶で『はだしのゲン』をまとめ読みして戦争と平和のなんたるかについて考えをめぐらしていた、起きたら夜だったのでまた寝た等々、更新停滞の理由はいくつも挙げられるのですが、なんといっても一番の理由は『ファイプロ』なのです。

 ファイプロ、つまり『ファイアープロレスリング』シリーズの新作がドリームキャストで発売されました。『ファイアープロレスリング』シリーズとは有史以来のプロレスゲームの頂点に君臨し続けるレジェンドゲームであり、僕などはスーファミ時代よりこのゲームを延々と遊び倒し、ファイプロ歴はかれこれ12年にもなろうという愛好ぶりなんですよ。なんですよ。ええ、そうなんですよ、といった流れでもって、今夜は僕の大好きゲーム『ファイプロ』を語らいでかかたらいでか。

 よいゲームとはどんなゲームか? という問題があります。僕の答えは実にかんたん、「想像力の入り込む余地のあるゲーム」です。「行間のあるゲーム」といってもよいでしょう。「映画的であること」を目指した近年のFFが駄作であり、一方で主人公の台詞の一切をプレイヤーの想像力に委ねるというスタンスを崩さないドラクエが支持され続けるのも、わが持論と照らし合わせてみれば当然のことなのでありまして。で、そこでファイプロ。想像することこそゲームのキモであると考える僕にとって(※1)、このゲームほどゲームらしいゲームはありません。

 ファイプロの中では、現実では不可能なカードをいくらでも組むことができます。お約束の馬場vs猪木から、カール・ゴッチvsカレリンだろうとヒクソンvsアジャ・コングだろうと自由自在。夢は僕の脳髄の枯野を駆け巡ろうというものです。

 しかししかし、こんなものはまだ序の口。このゲームの真髄は自分の好きなレスラーを作成できるエディットモードにあります。エディットモード自体は今時めずらしくもありませんが、注目すべきはその細かさ。豊富なパーツを使いこなせば誰だって作れてしまうんです。

 普通はこのモードを利用してゲームに収録されていないマイナーなレスラーを作成して遊ぶのでしょうが、僕はプロレスに詳しいわけではないのでレスラー自体は収録されているものだけで既に満足。それよりもむしろ実在のレスラーとはあまり関係ない人物を作る作業に燃えます。

 ハルク・ホーガンを改造した「サンダーリップス」(※2)でビクトリーロードを勝ち進んだり、鮫島伝次郎(※3)や朴さん(※4)を作って新団体「広島麦っ子プロレスGGG」を旗揚げしてみたり、菅原先生(※5)や京極先生(※6)といった母校の教師を作成して校内統一バトルロイヤルを開催し、現在同じ高校に通う弟と内輪で大いに盛り上がってみたり、文豪レスラー団体を旗揚げするにあたり、漱石は柔術家(※7)、芥川は骨法(※8)、太宰はグラウンド(※9)とだいたい文体と風貌でファイトスタイルを決めてはみたけど、さて梶井基次郎はどうしたものかと悩んでみたり(※10)、今夜BSでQUEEN特集を観て猛烈にフレディ・マーキュリー(※11)を作りたくなってしまったり、そうなりゃついでにシド・ヴィシャスやジム・モリソンやカート・コバーン(※12)も作って「涅槃最強カリスマアーティスト決定戦」なるトーナメントを開催しようかということになったりと、夢は枯野をオーヴァードライヴ、とどまるところを知りません。ああ、目眩がするほど光り輝く黄金カードたちよ。アポロvsサンダーリップス! ロッキーvs力石徹! 夏目漱石vs小川直也! 梶井基次郎vsアンドレ! フレディ、ボウイ組vs馬場、猪木! すごいすごい観たい観たい! といったわけでもはや日記を書いている場合じゃないんです。僕の脳内では既にフレディと猪木が睨みあっています! はやくだれかゴングを! はやくはやく! ひとつ空けとけリングサイド! 今日もリングにゃ血の雨が降るぜってなもんでそれじゃこれにてこんな日記でいやはやなんとも! 




(※1)世の識者の中には全く逆のことを言う人がいますが、なんともまあかあいそうに。
(※2)『ロッキー3』に登場する悪役レスラー。ロッキーを場外まで投げ飛ばした「欲望の究極の対象」。若き日のホーガンが演じている。
(※3)『はだしのゲン』に登場する町内会長。戦後のドサクサで財をなし、後に市会議員にも立候補する。ヒール。
(※4)同じく『はだしのゲン』に登場。在日朝鮮人に対する差別や偏見と戦いながらたくましく生きた。〔通常モード〕と〔闇市モード〕を作成。
(※5)母校の体育教師。校長が話をしているその後ろでこっそりアクロバットを披露したりして生徒を楽しませる。餅つきが好き。今年で退官のルチャファイター。
(※6)英語教師。カナリアに添い寝したらうっかり圧殺してしまった、という話が持ちネタだった。既に退官のサブミッションマスター。
(※7)『三四郎』だけに。必殺技は「山嵐」を予定。『坊ちゃん』だけに。
(※8)なんとなく。必殺技は「歯車」(ブレイジング・トルネード)を予定。
(※9)なんとなく。必殺技は「走れメロス」(ランニングパワーボム)あたりか。
(※10)文体はヴォルク・ハンなのに、風貌はどう見たってパワーファイターだから。必殺技は「レモンクラッシュ」(ココナッツクラッシュ)あたりか。
(※11)QUEENのヴォーカル。1992年にエイズのため死去。ライブ時の一挙一動がヘンテコでかっこいい。とてもかっこいい。
(※12)夭折のカリスマたち。