|
最近、日曜の朝は早起きすることが多いので、アニメ『デジモンテイマーズ』をよく観ます。おもしろいです。なので、これからおもしろいデジモンばなしをしますが、デジモンばなしを面白そうに語るヒモロギさん(明日で24歳)のほうを笑わないようにしよう。おもしろがるポイントがズレているよ。 『デジモン』のなにが面白いかって、そのデザインのコンセプトがステキですね。まず、敵デジモンは十二神将をモティーフにした仏教臭プンプンのデザインです。たとえば、三鈷杵みたいなのを背負った鳥型デジモンの名前が「シンドゥーラモン」。主人公たちが「うわあ。なんだこのでじもんわ。でーたにのっていないでじもんだぞう」などとたいそうおどろきあやしんでいる時点で既に、視聴者の僕のほうでは相手の姿かたちからバッチリ名前がわかっていたりするので、非常に優越感を感じることができます(日曜の朝っぱらからいい大人がなにをしているのか)。 で、いま僕は、ルキちゃんという少女の使役する「レナモン」なるデジモンについていろいろと考えをめぐらせています。この「レナモン」、ふだんは二足歩行のキツネらしき造型であり、これが「進化」すると、尾が九本に増え、四足歩行のより動物的な「キュウビモン」、つまり「九尾の狐」的な造型になります。さらにもう一段進化するらしいのですが、僕が観た回においてはその姿を発現させていません。 ここで疑問がいくつか生じます。 �@なぜ「レナモン」なのか？ 他のデジモンの命名法からみて、「レナモン」の「レナ」にもなんらかの意味があるように思われるのですが、キツネと「レナ」の関わりというものが、いまひとつ僕にはわかりませんでした。ご存知の方は、よろしくご教授ねがいます。 �Aキュウビモンと太極図の関係 レナモンの手甲、および進化したキュウビモンの額には太極図(当サイトのトップページにもある、黒白が巴になったマークのこと)があしらわれています。しかし、これはおかしい、ということにすぐ気づいていただけるかと思います。というのも、そもそも九尾の狐とは日本においては鳥羽天皇(近衛天皇)を惑わす妖婦玉藻前のことを指すのですが、一方で、その玉藻前の正体を見破って宮廷より追い払った陰陽師安倍晴明(泰成)の呪力の源である陰陽五行論のうち、陰陽の循環をあらわすシンボルが太極図であるのです。いわば太極図とは、九尾の狐にとっては敵方のシンボルです。 つまり、このデジモンは「九尾の狐」と「太極図」という互いに相反するであろうシンボルをその身にまとっているのです。この二律背反したシンボルを併せ持つキャラクターには、果たしてどのような秘密が隠されているのでしょうか？ �Aの疑問を解くカギは、キュウビモンの上位進化形態にあると考えるのが妥当ではないでしょうか。作中のオープニングに、キュウビモンの上位進化形態がほんの一瞬、ちらりと映ります。それを見ると、四足であった動物的デザインのキュウビモンが、純白の衣冠束帯に身を包んだ人間的デザインへと変貌を遂げていることがかろうじて確認できます。これはまさしく「セイメイモン」とでも形容すべき姿です。あくまで仮定ですが、九尾の狐→安倍晴明、という進化が本当に行なわれるものとするならば、そこに論理の破綻は起こりうるものでしょうか？ 僕には、この進化過程は一概にナンセンスとして一笑に付しえるようなものでもない、と思えるのです。 生物学的、遺伝学的「進化」について考えを巡らせる時、九尾の狐と安倍晴明の血脈は決して断絶したものではありません。なぜなら、晴明とて篠田の森の白狐を母に持つ、れっきとした「狐の子」なのですから。 分類学上(門外漢ゆえ確かなことはわかりかねますが)、キツネと安倍一族が交配可能な点から考えるに、両者を「同種」あるいは「同属」とカテゴライズすることはあながち牽強付会の類ではないでしょう。 さらに想像をたくましくして「キュウビモン→晴明デジモン」進化問題を考えるならば、恐らく次のようなこともいえるでしょう。「晴明の母親は九尾の狐であ」ったと。 九尾の狐が日本の内裏を騒がせる前、彼女は中国の周王朝を傾け、滅亡せしめたのでした。それから暫くの間、彼女の動向は杳として知れません。その空白期間に、彼女が篠田の森でひっそりと身を潜め、晴明の父安倍保名との間に一子を設ける事態が決してなかったとは、誰にも言い切れないのです。かように九尾の狐と安倍晴明とを一親等の関係と捉える時、「キュウビモン→晴明デジモン」の関係において「進化」の文脈はまったく正当なものとして理解されるのです。 えー、『デジモン』をテクストとして、安倍晴明が親殺しであることが説明できました。できたつもりになりました。晴明ファンに式を飛ばされそうです。 いろいろと多忙な今日、こんな日記に一時間も費やしてしまいましてなんだか泣きそうです。
|