9月4日(火)


 今日はいろいろたいへんでした。

 朝起きたら下痢でもないのに腹痛がギリギリひどくて、正露丸を服用したものの腹痛いっこうにおさまらず、じっとしていると苦しいので茶の間のタタミにはいつくばって名うての暗黒舞踏家のごとくウネウネヒクヒクのたうちまわっていたのですが、そんなことをしているうちに腹痛はどんどんひどくなるわ家族は僕の命がけの暗黒舞踏の芸術性を解さないわで、ああ、もうおいら死ぬのね、生まれてくるのが早すぎたのね、孤高の暗黒舞踏家は朝焼けに死すのみなのね、ただいっさいはながれてゆくのね、などとブツブツ呟き昏睡状態(コーマ)におちいった僕は家族の手によって病院に連れてゆかれました。あ、脳のじゃないよ。内科だヨ。

 中途クルマの中でもウネウネヒクヒクしていた僕でしたが、病院に着いたからには大安心、ここまで来れば治ったも同然よ、と紫色になった唇のはしを少しゆがめて笑顔をつくりつつ待合室を見渡してみれば、じーさんばーさんの集団が待合室中にギッチリギチギチと詰まってました。なんだよこんなに待つのかよ、やっぱりオイラ死んじゃうよ! そもそもなんだよこのジジババ団は! みんなで戦前の歌謡曲を合唱したりして僕より元気じゃん! 弁当持参で食欲めちゃくちゃ旺盛じゃん! 僕なんかマジで目がかすんできてるじゃん! 胃液が喉までこみあげてるじゃん! こいつらの順番待ちのために僕は死ぬのかよ! 冗談じゃねーよ。ふざけんな。といったかんじで、薄れていく意識のなかで僕は罪のないじーさんばーさんに悪態をつく毒蝮三太夫モードへとトランスフォームしていたのでした。人生の思い出より毒蝮の顔のほうが走馬灯のごとくクルクルまわる僕のいまわって一体。

 とりあえずどっからどうみても急患クライシスな僕でしたので最優先に診察室横のベッドに寝かされ、そこでひとしきりケロケロしたあと、生まれて初めてお尻に注射を打ち込まれ、生まれて初めて点滴を打たれたのでした。

 結局何の原因による病気かは不明で、恐らくストレスからくる神経性のものでしょう、との診断を受けました。ストレスといわれてもここ数日はゲームをしたりマンガを読んだり映画を観たり買い物をしたり、なのびのびリラックス週間だったはずなのですが、医者せんせいが「大学院生ともなると研究とかいろいろ大変ですものね」と気の毒そうな顔でおっしゃるので、僕も釣られて「ええ、なかなか大変な部分があることは否定できません。オエップ」などと話をあわせておきました。ああそうか、こうして周りに気を使う僕の気配りが小さなストレスとして逐次コツコツと蓄積されてゆくのですね。なんてこった、よく気がつく善人ってソンだなあ!

 といったかんじで、点滴と注射を打ったらだいぶラクになりまして、現在こうしてつたない日記が書けるまでどうにか回復しました。とはいえ、なにかとこまごまとした病気を患う僕ですので、いつ突然こときれるか予想もつきません! まあ、そんなスリルがこの日記の魅力ですけどね! かといって、僕と「ほぼ日刊イトイ新聞」のガンジーさんとで、どちらの日記が先に途絶えるかを賭けたりするのは不謹慎ですよ! だけれどちなみにオッズは3:7なので、アンタが勝負師だってんならいっちょおいらに賭けてみな!