8月27日(水) 　「あなたの知らない世界」チックな怪談を募集します、採用者には「新倉イワ王」の称号をさしあげます、という旨の日記を8月15日付の日記にアップしたんですが、どうしたことか、いつのまにかNot Foundになっていました。もしかしてアップロードし忘れていたのかな、とも思ったんですが、この日記を読んだ方からの反応がメールで届いていたので、アップしなかったわけではないらしい。ということはサーバーの不具合かなにかで消えてしまったのかな、とさして気にも留めず再アップロードを試みようとしたんですが……ない、ないんです。ハードディスクのローカルファイルも、8月15日分だけが忽然と消失しているんです！　 　こんなこと、普通に考えればありえないことです。僕は背筋に悪寒が走るのを感じ、気味が悪くなってパソコンの電源を落としました。しかし、消えない。フリーズしたわけでもないのに、消えないんです。それどころか、ガガガガという妙な音がパソコンの内部で鳴ったかと思うと、今度はウワンウワンという、なにかの残響音のような、部屋の空気全体がひずむような気味の悪い音がモニタから鳴り響き、やがてパソコンは沈黙しました。 　僕は恐ろしくて身動きもできないままパソコンの前に立ち尽くしていたのですが、ふと、何も映していないはずの黒いパソコンモニタに、白い斑点のような、ゴミのようなものが付着していることに気づきました。いち、に、さん……合計五つほどの白いゴミが、弧を形作るような位置でもってモニタにくっついているのです。僕はそのうちのひとつをつまみ取ろうとしたものの触ることが出来ませんでした。どうやらこのゴミは、モニタスクリーンのガラスを挟んだ反対側にあるようなのです。……一体このゴミはなんなんだろう、どこからガラスの中に入り込んでしまったのだろう……僕はモニタに顔を近づけて、ゴミのひとつをまじまじと凝視しました。近づいてみて初めてわかったのですが、その白いものの表面には細かなスジがあり、そのスジは円状に渦を巻いていました。 　あっ、これは指紋だ。そう思った瞬間、僕の顔はモニタからぬっと突き出てきた白く筋張った手につかまれ、恐ろしい力でこめかみが潰れるほどに締め付けられました。パタパタパタ……必死にもがく僕の背後で複数の人間が走り回る音が聞こえますが、モニタから伸びた手に顔をつかまれている僕には何も見ることが出来ません。やがて複数の足音は僕の背後で足並みを揃えるようにピタリと止まり、僕の両手、両足、そして首を、モニタの手と同様の怪力で掴み、捻り上げ、そして締め付けるのでした。僕は恐怖と激痛と酸欠とで、程なく気を失ってしまいました。 　翌朝、僕はベッドの上で目を覚ましました。あたりを見回してもなんら異常はなく、パソコンも消えたままです。ただ、体のあちこちについていた奇怪なアザだけが、昨晩の出来事が現実であったことを僕に思い知らせるのでした。 　とまあ、そんな心霊現象を身をもって体験してしまいました。こわかったです。ぶっちゃけ、二段落以降はいきおいにまかせたアドリブ創作怪談なんですが、うそっぱちなんですが、とりあえず第一段落にかぎっては実話ですので、そこだけ信じてください。 　とにかく不思議な話です。新倉イワオ氏の霊の仕業としか思えません。まさか僕のパソコンの霊的結界(ノートンアンチウイルス)をやすやすと突破してファイルを削除してしまうとは、霊というよりも、もはや怨霊クラスの大呪力。なんてこった、このままでは、僕の一族が続けざまに怪死を遂げたり、京都で大火が起こったり、我が家の御殿に雷が落ちたりしかねません。これはたいへん危険であるので、古来よりの鎮魂法に則ってイワオ怨霊を御霊として祀り上げることにしました。そういうわけで、今日から当サイト「死せる魂の会」の祭神は新倉磐王大自在笑天です。どうぞみなさんも笑天さまをあがめたてまつってくださいね。 楽太郎「『笑点』のプロデューサーを務めた笑天さまとかけまして」 円楽「笑天さまとかけまして？」 楽太郎「本地仏は馬頭観音とときます」 円楽「ほーう、その心は？」 楽太郎「お前だよ、お前」 　会場(笑) 　こんなことばっかり書いていて、また霊障があったりしたらやだなあ。