1月27日(月)

 レポートおわった、イエーイ、これでゆっくりできるゼー、あそーれニンドスハッカッカ、ヒジリキホッキョッキョ! などと前近代的なよろこびかたでもってウカれていたところ、研究雑誌に応募する論文を一本書くことになってしまい、よろこびもつかのま、干しシイタケのようにシオシオになりながらウンウン頭をひねってます。ようやくヒマになったと思ったのに、む、むごうございましゅ〜(往年の小松政夫ギャグ。って、僕はいったい何歳なんだ)。

 論文が行き詰まってしまったので、こないだ録画した『ブラックワイドショー』のなかでノーカット放送された北朝鮮の「少年律動体操」を見よう見まねでドタバタ踊ってウサを晴らしていたところ(はらすな)、隣の部屋で受験勉強ぶっこみ追い込み中の弟がやってきて、「うるさい」と怒られました。その時なぜか無意味に小松政夫化していた僕は、ずいぶんずいぶんずいぶんネ、とばかり「せっかくお金を儲けておかーたまの大好きな、カ〜ラスの焼き鳥を腹いっぱい食べていただこうと思ったのに〜」と泣き崩れてみせると、さすがに弟も感じいったものかすこし涙ぐみ、二人して「許して、許して、許して〜」と泣きながら抱き合ったものです。これですっかり仲直り、気分もすっかり晴れたところで僕はやおら立ち上がり叫びます。
「ウワオー! ゥワオッ! センキュー! センキュッ! ゥワオッ! 本日は、ニギニギしきご来場、まことにありがとうございます。アタクシ、四畳半のザットエンターテイメント、小松与太八左衛門でごじゃいましゅ〜! センキュー! センキュッ! ……さぁ、歌は流れるアナタの胸に! いま歌謡界の王者にサ〜〜ンゼンと光り輝く、お待ちどーさまっ! 涙、ナ〜ミダの電線音頭の登場ですぅ〜〜!」
 そしてリモコンをポチッと押すや、映し出されるは遥か北朝鮮の原子力発電所から百万ボルトの電線をひた走りやってきたかと思われるような笑顔のステキな子どもたち、そんな彼らがチュチュンがチュンとばかりに踊りだします。おどろく弟。
「わあっ、これは、少年律動体操!?」
「ああ、この感激は、いったいなんなのでありましょうか。泣かないと約束をしたのに、もう泣いてしまった男の子。ここでやめてはイケマセン! 北朝鮮は今、そうです! 立ち上がったのであります! そして、全世界へ向って、牙をむくのであります! 嗚呼、涙、ナミダの核査察拒否、さあ皆さん、一緒に参りませうー!」
「た〜まりましぇん!」
「あそーれ、踊りましょう、踊りませう、カモナミュージック!」

 ということで、というか、なにが「ということで」なのか順接という名の文法が崩壊してしまった彼岸の世界で、二人の兄弟は「少年律動体操」をヨイヨイヨイヨイ、オットットットと踊りだしたのであります。書いていて意味がまったくわからないし、そのうえ不謹慎です。そのくせ内容は概ね実話です。

「お兄たま。僕ね、明日私大受験」
「おおそうか、頑張ってくるのだぞ」
「だからね、ください」
「何を?」
「だからね、明日受験だから、ください。おこづかい」
「おお、おお、おお」
「5万円」
「大学を受験するのにお小遣いがいるかっ!」
「いるから笑っちゃうんだよね。あはははは……ください6万円」
「バカっ! バカっ! そんなバカなはずがない!」
「そんなはずがあるから笑っちゃうんだよね。あははははください7万円」
「バカっ! 第一、受験生が受験に小遣いを持っていって何に使おうというのだ」
「約束したんだもーん。ルミ子ちゃんとマリちゃんと高橋クンと弘樹クンと」
「何を?」
「だから、試験を早く切り上げて、そのあとポッポッやろうとかいってんの」
「〜〜〜っ!」
「わっ、お兄たま、ぶたないで」
「(弟に抱きついて)お兄たまも連れてって〜! お願いだから〜!」(オチ)


 ……なんということだろう。伝説のバラエティ番組『みごろ!たべごろ!笑いごろ!!』をなぞってみただけなのに、こんなにも先鋭的な日記になってしまった。70年代ってすげえなあ。

 とりあえず、私大受験を明日に控えた弟と一緒に律動体操を踊ったりするのは、人としてすごく間違っていると思いましたし、『みごろ!』のマネをしたいという動機のみでもってウェブ日記を書くというのもものを書く姿勢としていちじるしく間違っていますね。愚にもつかないものを読ませてしまってほんとゴメンなさい。反省してます。わりーね、わりーね、ワリーネ・ディートリッヒ。(懲りてない)