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『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』を絶賛大鑑賞してきました。いやあ、空前絶後大安定の面白さでしたよ。よかった！ よかったよ！ ただですね、いかんせん長い。三時間超。長時間にわたる映画というのは、一見おトク感があるようにみえて、僕の場合はそうでもないんです。僕は映画鑑賞に際して感情移入の度合いがはなはだしく、おもしろ映画であるほどそのシンクロ率は増し、ハラハラドキドキな映画の展開に合わせて身体も極度に緊張し、したがって映画鑑賞中は病的にトイレが、いわゆるおしっこが近くなるという。それが二時間の映画だったらギリギリ一回の排尿で済むところを、三時間ともなったらば一回から二回、くだんの『ロード〜』なんかはシンクロ率、およびハラドキ度が臨界点を超えっぱなしであったため、つごう三回もトイレのために席を立ってしまいました。恥ずかしいやら筋がわからなくなるやらで、ほんとにもう困った体質！ 心的緊張による頻尿体質というのはふべんなもので、映画の他にも、たとえば初デート時の僕の頻尿ぶりといったら、まるでもう不審者の域。 「あ、あすこにトイレがある」 「えっ、もしかしてまたトイレに行くの？ ヒモロギくんってさー、マジヤバくない？ うちのじーちゃんより頻尿だよねマジで」 「ち、ちがうよ、ヤバくないよマジで。僕は見たんだよ、あすこのトイレ方面に幻の蝶オオイチモンジが飛んでいくのを。あまりの珍しさに僕は追いかけずにいられないんだ。待てー！」 「……」 −数分後− 「ふう、すっきりした」 「すっきり？」 「オオイチモンジを見たくて今までずっとモヤモヤしてたから」 「ふーん」 「あのね、蝶というのはアンモニア臭をすごく好むんだ。つまり、おしっこのにおいだね。だからトイレの周辺を飛んでいたんだよオオイチモンジは」 「マジでぇ？ なんかさー、ヒモロギくんってぇ、超マーブル系だよねー」 「ファーブルね」 「超ファーブル」 「ちょ、あ、ちょっと、トイレいってくる」 「またぁ？ マジヤバくない？」 「ヤバくないって。マジで。何も排泄行為のためにトイレに赴かんとするわけではないのだから。あすこの公衆便所は汲み取り式だったから、もしかしたらタマオシコガネ、いわゆるフンコロガシがいるかもしれないと思ってね。観察せずにはいられないというわけさ。タマオシコガネ待てー！ も、もれるー！」 「……」 −数分後− 「やあ、よく考えたら日本にタマオシコガネ種は生息していなかったよ。うっかり屋さんだろ僕って。ははは。そもそもタマオシコガネは古代エジプトにおいて創造神、あるいは太陽神として崇拝されスカラベという名の……って、あれ、どこいったのギャル美ちゃん（名前）？ ギャル美ちゃーん！？」 みたいなやりとりがね、初デートのたびにあるかないかといえば、まあないんですが、そもそも僕は流麗な日本語を話す教養あふるる女子としか交際したくないんですが、作り話とはいえ、粗野で無教養なギャル美ちゃん（名前）もね、ちょっと頻尿なくらいでヒモロギさんをフるなんてなっちゃいませんよね。こんなにかっこよくて優しくてなおかつ昆虫にくわしい男なんて、世の中にそうそういないんだゼー！ キベリカタビロハナカミキリくらい珍しいんだゼー！（わかりにくい） |