8月22日(金)

 僕が緒川たまきさんのファンであるということは、ちょっとしたトリビアとして周囲に認知されているわけで、おかげで今日のテレフォンショッキングにたまきさんが出演する、なんていう情報も教えていただけたりするわけなんですが、にもかかわらず、あー、見逃してしまいました。わー。うわー。

 学食のテレビでたまきさんのご尊顔を粛々と拝謁し、キツネうどんを手にしたまま直立不動、歓喜の涙にむせんだり嬉しさあまって失禁したりする算段だったのですが、なぜかその日にかぎって食堂に、テレビが、なかった。

 僕の知っている限りにおいては、テレビという家電製品には足は生えていなかったはずなんです。ですよね? たしかそうですよね? 羽根とかも生えてないですよね? 実はソニーのテレビにはキャタピラがついていてツンドラの果てまで疾駆するとか、シャープのテレビは蠕動運動で壁にも登るとか、そういうこともないですよね? とすれば、テレビが一人で勝手にどこかにいなくなってしまうはずがなく、誰かが人為的に食堂のテレビを—否、今日に限ってはあえてたまきさん映像専用受像機と呼ぼう—食堂に本来あってしかるべきたまきさん映像専用受像機を持ち出したとしか考えられないわけです。なぜだ! なぜ食堂のテレビを今日に限って持ちだすのか! 今日でなければ、誰が食堂からテレビを持ち出して、そのテレビで何をしようとも、たとえばうかつなIQの体育会系男子どもがテレビをボールがわりにサッカーをはじめようとも、食材を切らした食堂のおばちゃんがブラウン管を繰り抜いて「ピーマンの肉詰め」の代わりに「テレビの肉詰め」といった独創的なメニューを開発しようとも、僕は一向にかまわないのです。しかしなぜ今日なのだ! 聞けばたまきさんは黒のキャミソールという、もろ僕ごのみのファッションでたまきさん映像専用受像機上にうつしだされたというではありませんか! なぜ僕はそれを観ていないのだ! テレビはどこに消えたのだ! まったくもって、この世には神も仏もありやしないのだ。ははは。流す涙も血の涙。

 というわけで、僕は今日から無神論者です。社とか廟とか、見つけ次第どんどん破壊していくんでよろしくお願いします。その姿はまさにひとり文化大革命。