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じつはここだけの話、僕は女優兼美女を営んでおられる緒川たまきさんの大ファンであり、げにうつくしき彼女が好きで好きでしかたがないという、きわめてたしかな審美眼の持ち主なんですが、そんな僕があろうことか観そこなってしまった『笑っていいとも』出演時の映像をタマキスト仲間の黒比丘尼さんに貸していただきました。そして嬉々として観させていただきました。いやはや美人。マナコに飛び込む美人像。町田風にいうならば美人襲来絵詞。ほんとうにもう、すばらしいよ。よかったよ。 私信になりますけど、『いいとも』をわざわざ録画してくださったうえ、わざわざ貸してくださった黒比丘尼さんにはゲレンデが溶けるほど大感謝です。黒さんにビデオを貸していただかなかったら、たまき映像を観たいという不満欲求ますます募り、ヤフオクの「オガワタマキのお宝映像〔1000円から〕」などという怪しげな物品を2万円で落札したりして、なおかつその内容はプロレスラー小川直也のマタンキ無修正映像だったりして、それを見た僕ショックのあまり卒倒、転倒、意識混濁、再び目覚めた僕、直也のマタンキが脳裏にずずいと刷り込まれとうとう衆道に傾倒、いいじゃありませんか男でも、なにをくよくよするものか、真っ赤なフンドシ引き締めて、ゆくぞこの道（衆道）どこまでも、そんなアヴァンギャルドな人生を歩んでしまっていたかもしれません僕。たすかったよ。 いや、さすがにそこまで短絡な選択肢しか用意されてない人生はありえないですね。僕の人生は子供向けのゲームブックとかじゃないんだから。 あ、ゲームブックといえば、僕がうだつのあがらない中学一年生の時、電車の中で『どうする！？ 食糧問題』とかいうわけのわからないゲームブックを読んでいたら、いかにも恐そうな、それでいて頭の悪そうな不良高校生グループにからまれ、「おいおまえなによんでんだよう」などと句読点のないひらがな文で脅され、読みさしのゲームブックを取り上げられたことがあります。しかし、ふと本のタイトルを見た不良の一人が「なに！ しょくりょうもんだいだと！」とひらがな言葉で大変おどろき、更にパラパラとページをめくって、「おい、こいつ、すげーむずかしいほんをよんでるぞ！」「まじで！？」「まじだ！！」とひらがな語で驚嘆しあい（ゲームブックなのに）、なぜか一目おかれてしまった僕は「これからもしょくりょうもんだいのべんきょうをがんばれよ！」と肩をたたかれ、無傷で開放されたのでした。 そんな彼らとは電車の中やホームで以後幾度も遭遇し、そのたび「よう、“しょくりょうもんだい”じゃねえか！ ちゃんとべんきょうしてるか？」などとひらがなで気さくに挨拶され、その時僕のことを知らない不良がそばにいれば、僕のことを「こいつはしょくりうもんだいについてべんきょうしているすげーやつなんだ」と紹介したりするので、僕のほうは大変こまりました。なぜって、道を歩いているとろくに名前も知らないヤンキーから「おい、おまえ“しょくりょうもんだい”だろ。さいきんのしょくりょうもんだいはどうなってるんだ？ しょうらいおれたちはくいもんがなくてがししてしまったりすることはないのかな？」みたいなことをひらがなで突然聞かれるのです。こわすぎます。見知らぬヤンキーに「アフリカのほうがわりかし大変みたいです」とか、「イナゴ被害はなかなか馬鹿にできません」とか、てきとう極まる回答をしていた中坊時の僕も僕でどうかとは思うんですが、でもこわかったので彼らの前では食糧問題研究家を気取らざるをえなかったという。ヤンキーに呼び止められても食糧問題について質問されるだけという、わけのわからぬ中学生活。でもまあ彼らのおかげで僕はカツアゲ、恐喝のたぐいに遭遇したことはありませんでした。 うーん、なんだかウソくさい話なんですけど、意外と実話です。ちょっとだけほのぼのする話ではありますよね。かすかにほんのちょっとだけ。 |