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録画していた『パピヨン』を鑑賞。面白かったです。つごう三回の脱獄を試みた服役囚パピヨンがついに悪魔島からの脱走に成功、自由を手にするまでのハートフルストーリー。懲罰独房に放り込まれたパピヨンが常に暗闇、食事は半分という劣悪な住環境のなかでゴキブリを食べながら命を長らえるシーンは壮絶です。『銭形金太郎』とかに出場したらきっと優勝できると思いますスティーブ・マックィーン。おもしろかった。おもしろかった。 してみると僕は、刑務所や収容所のようなじめじめ施設を舞台にした映画がとりわけ好きらしいです。というのも、僕の「シネマ番付・春場所編」を見てみるとですね（ほんとうに番付表を作っています。ばかなんです。ごめんなさい）、不動の西横綱『大脱走』（ナチス収容所からのチームプレー脱走を描いたマックィーン大先生主演のキングオブシネマ）を筆頭に、東大関と東前頭六枚目には『女囚さそり 第41雑居房』と『女囚さそり けもの部屋』が、西前頭十一枚目には精神病棟が舞台の『17歳のカルテ』、十両力士には『ショーシャンクの空に』『カッコーの巣の上で』『ライフ・イズ・ビューティフル』『刑務所の中』が揃い踏み、といったかんじで豚箱部屋力士の活躍には目を見張るものがあります。目を見張るものがあるでゴワス。 今回キラ星のごとく現れ白星デビューを飾った『パピヨン』は来場所一気に西前頭五枚目あたりに陣取る可能性が高く、となると今場所前頭十五枚目でふんばっている『ダーティーハリー』あたりは十両転落の危機でゴワス。『ダーティーハリー』関が幕内から外れるとクリント部屋の幕内力士は『夕陽のガンマン』関一人だけ、かつては一時代を築いた名門クリント部屋の存続があやぶまれるゆゆしき事態でゴワス。ヒモロギ理事長が近日中に鑑賞するであろう『続・夕陽のガンマン』関が来場所の番付でどこまで上位にくいこんでくるか、部屋の存続は彼の頑張りしだいでゴワしょうなあ。でゴワス。 なぜ豚箱部屋力士が好きなのか、もとい、収容所系映画が好きなのかと問われれば、僕にMっ気があるからという性格的要因はさておいて、それはやはり自由のない世界の出来事を描いているからなんでしょうね。 自由を奪われがんじがらめにしばられた世界のなかでは、とるにたらないくだらないものが燦然と輝きをますことになる。パピヨンは生き延びるために必要な蛋白源をゴキブリに見いだし、女囚さそりはメスのように研ぎすましたスプーンで刑務所長の目をつらぬき、連合国のいい年こいた大佐や大尉はたかだかトンネル掘りで大さわぎ。収容所、監獄、独房と管理体制がシンプルになればなるほど登場人物の発想はがぜん面白くなってくる。そんな彼らを観るにつけ、僕はある種のあこがれと共にノスタルジーさえ感じてしまうのです。 といってもミスター品行方正東北ブロック代表である僕にマエなどあろうはずもなく、なんかね、ああいった映画を観ていると中学生のころの学校生活を思い出してしまうんですよ。「持ち物検査をくぐりぬけ、いかにして『ロマンシングSa.Ga』を友達に手渡すか」「体育の時間に教師の目を盗み、いかにして教室に戻り『オーケンののほほんと熱い国へ行く』の続きを読むか」そんなことばっかり考えていた十五の昼休み。今にして思うと、大人たちにほどよく支配されている学校生活ってすんごく楽しかった気がします。支配されて自由を奪われるからこそ色々とゆかいでこそくなことを考えつけるのであって、そこへいくと、「支配から卒業できてマジよかったよ」みたいな歌を歌った、なんだっけ、尾崎豊？ 支配されるというシチュエーションの面白さに気づかないあいつはまだまだヒヨッコですね。だいたい幾つだよユタカって？ え、26？ 25？ やっぱり僕より年下の若造じゃん。後輩じゃん。おまえ後輩のくせしてなんかえらそうな歌うたってんじゃん。まあいいや。とりあえずパン買ってこいよ。後輩だろ。ほら、ダッシュで！ 「ココナッツ」と「かにさん」でいいよ。え？ 行けない？ アシがないから？ じゃあ特別オレのハイパーカッコＥチャリ使っていいよ。早く行ってこいって。え？ 死んでんの？ オマエ死んでんの？ マジで！？ まあ、それはそれとしてパン買ってこいって。あー、超パン食いてー。 ○『パピヨン』関 所属：豚箱部屋 出身：フランス 番付：今場所は未登録／来場所予想……西前頭五枚目 名言：「野郎ども 俺はまだ生きてるぜ」 |