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僕もそろそろいい大人なんだし、おばけがどうしたとか宇宙人がどうしたとかいったウワついたサイトの運営を卒業し、うちのペットがどうのとか、じまんの愛車がどうだとか、そういう地に足の着いた無難で凡庸で現実的な小市民的サイトへとステージを上げてゆく時期なのではないかと考えているわけで。僕、ようやく達したんですよ。“社会的地位の高い人や実生活に充足している人の運営しているサイトほど凡庸でくだらない”というひとつの真理に！ ……そうだクルマだ！ 新車を購入したばかりの僕としては、これからクルマじまんの自己充足つまらなサイトを立ち上げるべきだ！ そうしたつまらなサイトを運営すれば、逆説的な流れでもって実生活も充足されてゆくにちがいない！ 「死せる魂の会」なんつうサイトはけっこうおもしろいので即刻閉鎖せねば！ 僕が先日購入した車は黒のエクストレイルで、ナンバーは『女囚さそり』の主人公松島ナミの囚人番号と同じです。それにちなんでサイト名は「フケだ！ アバレだ！ エクストレイル恨み節！」とし、サイト構成は愛車のスペック公開（無改造なのでカタログとおんなじ）や愛車の写真コーナー（無改造なので、撮影者の手腕から鑑みてカタログ以下の出来）、あとはエクストレイル仲間との絆のあかしであるところのリンクコーナー。エクストレイルに関する悩み相談をみんなで書き込むBBS。そこでやり取りされる同車種所有者どうしのオフ会情報。そういったベーシックなものにしたいと思います。これだ。これだろう。これしかないだろう。こういうあたりさわりのないサイトこそ社会的地位のある大人のサイトってかんじじゃないか。仕事やレジャーや家族を愛する大人がじぶんの幸福を自己確認するために、有限な自分の時間を圧迫しない程度の力加減でもって作ってみました的なサイト構成。これだ。これしかない。こういう大人幸福増幅サイトを作らなかったばっかりに僕は不幸なフーテンとなり、結果、今こうしてロクに正職をもたずふらふらする羽目に陥ってしまったのだ。「実生活が充実している人間の作るサイトはつまらない」。ンッンー、名言だねこれは！ などと意気込み、参考までにと先輩諸氏の運営しているエクストレイル自慢幸福サイトを閲覧してみました。 ……まあ、なんというのでしょうか、他人のクルマの写真など見せられたところでやはり面白いはずもなかったのですが、サイトのつまらなさは実生活の充実の裏返し、という観点からみるならばそれは是です。なのでその内容のつまらなさはさておくとしても、どうも僕は彼らと仲良くなることが出来ないような気がするなあ。これは困った。 なぜに仲良くなれないかといえば、だってあいつらさー、なんかもう全然アウトドア派なんだもんなあ。エクスに乗ってサーフィンにお出かけとか、エクスに乗って釣りにお出かけとか、エクスに乗ってスノボが最高とかなんとか、なんかもう話についていけないよ。エクストレイルというのはやはりそういう嗜好の人たち向けに売り出されているクルマのようで、車内にこもって筋少ばかり聴いてる僕なんかの入り込む余地はまったくなさそうです。オフ会に呼ばれたとしても、それはきっと僕を晒しものにするためであるにちがいない。なにかと話の噛み合わない僕を「やっぱヒモロギさんってさー、俺らと違って波に乗ったりとかしないからなのかなあ、話の波にも乗れなくね？」などと隣席のサーファーにコケにされたり、酒の入ったボーダーには「この野郎、なまっちろい顔しやがって！ エクス乗りの肌は小麦色がデフォルトなんだこの野郎！」などと言われ頭からコーラやしょうゆやいろんなだし汁をかけられたりするに決まってる。最終的には僕のようなインドアうらなりひょうたんがエクストレイルに乗っていること自体冒涜だ、みたいな流れになって、居酒屋を出た彼らは駐車場に停めてある僕のエクストレイルを取り囲み、ある者は鉄パイプを、ある者は角材を持ち、またある者は上着を脱いで隆起する胸筋および上腕二頭筋を誇示し、そして『ファイナルファイト』のボーナスステージばりに、であであと叫びながら僕のエクスを破壊し始めるに決まってる。そして「ファイナルファイトのボーナスステージかよ！」という僕の精一杯のツッコミも、幼少時からゲームもせずにひたすら野山を駆け回り雄叫びをあげていた野生派の彼らには通じるはずもなく、そして僕の愛車ブラックヨカチン号は養老の瀧駐車場でその短い生涯を終えるのだった…… えー、シミュレートの結果、愛車じまんつまらなサイトしあわせ計画は凍結のはこびとあいなりました。やはり僕にはこのおもしろサイトしか運営のしようがないみたいです。これから先、このサイトがどんどん面白くなってしまうことがあれば、そのときはどうぞ僕をあわれんでやってくださいねヨカチンチン。 |