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いや僕ほんとにダメっす、ゴキブリ。ヤバいっす。 いつものようにトイレでジャンプを読みながら用を足し、ふとじぶんの局部のあたりを見て、「あー、局部ー」とか思ってたら、なんかへんな触角が見えるんですよ。僕の局部のその下の、白い便器のヘリの陰から。 「ゴキブリ！」 そう思ったとたん、恐怖のあまり僕の局部は縮みあがりました。縮みすぎて、局部が体内にめり込み、一瞬にして男性器が消失し、その影響でホルモンがバランスを崩し、胸部が膨れ上がり、ヒップがプリンプリンになり、性別が転換し、そんな僕をモデルとした『ひもろぎ１／２』なるマンガの連載が始まり、そしてその人気ぶりから程なくアニメ化も決定し、ヤパパー、ヤパパー、イーシャンテン、などという意味不明な主題歌を森雪之丞さんが作詞しはじめるほどに縮みあがりました。なんかよくわかんないけど、とにかくそれくらい怖かったんだよう。 にくきゴキブリめを糞便地獄の彼方へと封印してやろうと考えた僕は局部丸出しのまま立ち上がり、急いでレバーを引いて水を流したのですが、水が流れた後も触角は元の位置のまま動かず。どうやらゴキブリは便器のヘリにこびりついているらしく、察するに、ゴキブリはトイレの壁に仕掛けられたコンバット内の毒餌を食し、巣に帰る中途便器に寄り道するうち命を落とし、なおかつそれからしばらく時間を経ているようなのでした。そんなこととは露知らず、ゴキブリの死骸の前であらわな局部を幾度もさらしていた無防備な僕。僕はもう、お嫁にいけません。あのけがらわしいゴキブリに、あたしの、あたしの…… などと、自らの貞操喪失をなげく前に、ゴキブリ死骸の始末をどうにかせねばなりません。こびりついたゴキをワリバシでゴリゴリこすったらバラバラになった死骸が姿をあらわし、思わずオエッと（後略）。しかも局部は出しっぱなしだし、自分の状態を俯瞰したらなんかもうめちゃくちゃ虚しくなっちゃいましたよ。虚しかった。シャイニング虚しかった。なんでゴキブリなんかのせいでここまで虚しい思いに駆られなきゃいけないんだ。あー、ゴキブリ絶滅しねーかなー。 僕がここまでゴキブリが苦手な理由は、ひとえにこの害虫に対する免疫がないためです。僕が育ったのは東北の寒村・鳳喰村で、この村の貧しいことは「瑞鳥が現れたとしても、村人は空腹のあまりその瑞鳥を食べてしまうであろう」というその地名の由来に端的に現れています。そんな貧しき鳳喰村に生まれ育った僕は、幼い時よりあらゆる蟲を食べてきました。イナゴはもちろん、蜂の子、マムシ、なんでも食べました。そんな環境だから、ミミズ、芋虫、毛虫にトカゲと、ただ毒虫のみを除けば森羅万象さわれぬ蟲はなく、恐怖を感じる蟲などいるはずもありませんでした。蟲は僕らが生きていくために必要な蛋白源であり、過酷な自然が気まぐれに賜る数少ない恩恵であったのだから。 ただしかし唯一、鳳喰村にはいなかったんですよ。ゴキブリなんて変な蟲。なにあの奇怪な生物？ どっから入ってくんの？ なんで飛ぶの？ なにがしたいの？ ゴキブリが怖くて睡眠不足におちいった僕をあざ笑ってんの？ もしかして殺す気？ 恐怖にうち震える僕をとり殺す気なの？ 今さらゴキブリに慣れ親しむことはぜったい無理なので、ほんともうどなたか、ゴキブリ避けに効果がある薬品、裏ワザ、呪術、真言、宗教、セミナー、手段は一切問いませんのでぜひとも教えていただきたく！ |