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処方された抗インフルエンザウイルス剤・タミフルをせっせと服用することによって、今やほぼ平熱、食欲も旺盛です。みかんだって、いっぺんに三個食べちゃうぞ。少し大きめのオレンジだってペロリだぞ。アイアム、オレンジ公ウィリアム！ いえー！ しかしまあクスリというものには副作用がつきもので、タミフルの効き目に感動するあまり適量以上のタミフルをコリコリとほおばっていたところ幻覚症状が現われ、足元から黒い蟲の大群が這い上がってくる妄想に悩まされ、うわあ、やめろ、やめろー、と叫びながらキーボードを一心不乱にたたき、蟲の群れを追い払おうとマウスをぶんぶん振り回していたところ、気づいたらいつのまにか「シネラマ島奇談」の表紙画像を作っていました。  やっぱダメですね。クスリは人間を駄目にします。なにが怪人現はるだ。ばかじゃないの。今日あたりからそろそろタミフル絶ちをせねば。 かれこれ数日間、誰とも会わず誰とも話さずひとり引きこもって暮らしていれば、タミフルのせいならずとも人間どこか少しおかしくなろうというものです。 僕の場合、一人暮らしを始めてから独り言が多くなってきたような気がします。ふと気を抜くと、「あー、中川翔子と結納かわしてーなー」とか言っている自分に気がつきギザ驚きギザキモス。中学生の頃はブルース・リーに憧れて毎日ヌンチャクの特訓をしていたという中川翔子ちゃんに憧れる気持ちそれじたいは、健康的な文化系オタク男子なら誰でも持つごく自然な願望であるので全然大丈夫なのですが、それが僕の自意識の関所を通らないでするっと口から出てきてしまうというのはちょっと問題があるような。 気づくといつのまにかお風呂で鼻歌を歌っていて、それがアメリカ合衆国国歌のメロディーに乗せた「天狗のー大統領ー、お鼻たかいゼー」などという、妖怪・天狗大統領をたたえる歌だったりするのも激しく問題だ。お隣さんにそんな馬鹿馬鹿しい歌が漏れ聞こえたら恥ずかしいし、過去四十三代の合衆国歴代大統領のなかには確か天狗はいなかったはずなので、僕のあやまった歴史観（水木史観）がお隣さんに知られるとおのれの不明がばれてますます恥ずかしい。 でも実際どうなんですかね。一人暮らしの人というのは、家に帰ったらいっさい何も喋らず、無言でごはんを作り、無言でそれを食し、無言でテレビを観て、たまに無言で笑って、無言でお風呂に入って、風呂あがりには無言で腰に手を当て無言で牛乳をゴキュゴキュ飲んで、そしてたまには無言でやらしいビデオあるいはDVDもしくは雑誌を鑑賞・閲覧などしたりして無言のうちに興奮し、ひとしきり満足した彼は無言のまま床につき、そして無言の夢を見る、夜空には星が流れ、そして無言のうちに人知れず燃え尽きる、そんな無言づくしの無言地獄なんでしょうか、一人暮らしって。 一人暮らしの独り言は是か非か、独り言があるのとないのとではどちらがより虚しいものか、プロの一人暮らし家の方に教えてほしいものです。ついさっきも「かっぱ天狗教のうた」を即興で歌いながら洗い物を済ませたこの僕に。 |