ここでも何度か書いているように、いまの僕の住処は新小岩です。

　 新小岩……蔑称“ちんこ岩”、英語名なら“Penis Rock City”、略してPRC。ペニス・ロック・シティ……その名の示すとおり、まさしくここは欲望とロックンロールの支配するマッドシティ。犯罪などは日常茶飯事。犯罪と空気、犯罪と呼吸はもはや同義。夜な夜な路上から聞こえる女の悲鳴など、新小岩住民にとっては深夜の鬨を告げる鐘の音程度の意味しか持ちえないのです。ブルルッ、この街の連中……みんな狂ってやがるぜ！

　犯罪都市の朝は遅い、と相場が決まっているはずなのに、今日は朝の九時に叩き起こされました。乾いた銃声と……そして子供たちの叫び声によって！

　犯罪に鈍感になってしまったPenis Rock City市民の僕でさえ、さすがに子供たちの叫び声を耳にして、じっとしているわけに行きません。ベッドから飛び起きるなり急いでジャケットを羽織り、、腰のベルトにコルトをねじこみ、右のブーツにナイフを仕込み、すぐさま銃声と叫び声の聞こえる街区へと、急いで駆けて行きました。駆けて行ったのだぜ。

　そしたらなんですかあなた。てっきりペニスロックな犯罪発生かと思いきや、単に近所の中学校で運動会をやっていただけの話なのであった。男子の徒競走に、女子たちは黄色い歓声をあげていたのであった。空砲の乾いた音は、晴れわたる空をぴりぴりと震わせ、それを合図に女子たちはひときわ大きく声をあげ叫ぶのであった。そして僕は、知っている子供がいるわけでみないのに保護者席に潜りこみ、そのままずっと運動会を観覧していたのであった。一組の大野くんがリレーで見せた三人抜きはとても見事なものなのであった。

　まあ、そんなこんなで半日を無為に過ごしてしまいました。一旦家に帰って昼ごはんを食べ、そしてまた運動会観覧に出かけていく僕の休日の過ごし方というものは、あからさまに間違っているとしか思えない。もはや狂気だ。

　 最後のプログラムである「全校男子による組体操」があまりにグダグダだったので、閉会式だけ見ずに帰ってきました。