去る７月１９日は僕の誕生日ということで、新宿の京王プラザホテルにて誕生記念パーティーが開かれました。各界の有名人が集結した絢爛豪華セレモニーの様子は民放各局で繰り返し放送されていたようですので、ご覧になった方も多かろうと思います。

　 ちなみに視聴者の方より、カメラに映ったヒモロギさんが常に浮かぬ顔をしていたのは何故なのか、といった旨の問い合わせが局のほうに何件もあったそうなのでここでお答えしますが、それは僕が今年で三十路に突入してしまい、ひじょうにアンニュイな気分になっていたからなのです。うわー、なんだよ三十代って。「三十代とかってマジでくせーし存在価値ねーから溶岩口とかにレミングスみたく列をなして続々と落っこちていって、まとめて全員死なねーかなー」なんてことを常々思っていたのに、とうとう僕自身が三十才になってしまった。刻の流れが不可逆的であることの残酷さにあらためて戦慄しました。絶望のあまり溶岩口を探して今すぐ飛び込みたい気分なのですが、三十代の老いさらばえた肉体では恥ずかしくて外出もままならず、皮肉にもこうして命を長らえている次第。

　しかしまあクヨクヨしていてもしようがない、三十路という深刻な障害を抱えながらも立派に生きている人は世の中に沢山いるのだから、僕も24時間テレビで意味のわからぬチャレンジをしている人たちみたいに目ん玉キラキラさせて生きていこうじゃないか、といった前向きな気分になりまして、とりあえず自分のためにセルフ誕生日プレゼントを購入しました。ブツはWiiの『ドラゴンクエストソード』と中古の『風来のシレンDS』。三十になってもゲーム三昧です。

『ドラクエソード』はWiiリモコンを振りまわすことによって画面上の妖怪変化をぶった斬ったり突き殺したりできるという斬新なゲームです。強力な必殺剣を使用するときには特別なアクションを要求され、頭上で剣（リモコン）をぐるんぐるん回したりします。ドラクエ勇者気分を体感できて大変に楽しいゲームなのですが、画面が暗転した瞬間、ブラウン管に興奮しながらリモコンを振り回しているおのれの姿が映りこんだりすると、客観的かつ冷静な気分になってしまい若干落ち込みます。おれはもう三十なのに、親孝行とか恋愛とか結婚とか育児とか出世とか栄転とか起業とか一切しないで、「くらえタホドラキーめ！」とか「どいているんだセティア、そいつはおれの剣技にまかせるんだ！」とか叫びながら剣に見立てたリモコンをブン回したりしていていいのかなあ。たぶんダメだろうなあ。ああ、なんかすごくダメな気がしてきた。ひしひしとしてきた。溶岩口はどこだ。