2

11月18日(火)

 僕は酒をあんまし飲まない一方で、甘ったるい清涼飲料水が大好きなので、コカ・コーラを1.5リットルのボトルで買って、毎日飲んで、おいしいなあ、おいしいなあ、タブクリアの七倍くらいおいしいなあ、などとひとりごちながら日々幸せを噛みしめているのですが、そんな僕の安い幸せを台無しにするのがペットボトルの分別回収。飲み終えたペットボトルのラベルをはがして、中身を洗って、キャップは分けて、本体はつぶして捨てましょう、みたいなことを行政は僕に求めているらしいけれど、なんで僕がそんなことをしなければいかんのだろうか。理解に苦しみます。まったく理解に苦しみます。このあほらしい後片付けのことを考えるだけでストレスがたまり、清涼飲料水の摂取によって得た一服の清涼感は瞬時に失われ、スカッとさわやか状態であった僕の屈託のない笑顔は、タブクリアを噛み潰した俵孝太郎みたいなしかめっ面になってしまうのであった。

 しかし、ほんとうに面倒くさくなりましたよねペットボトルの捨て方って。民間・行政の別を問わず、21世紀の御代になって従来のサービスがこんなにも低下した例を僕は他に知りません。みんなもっともっと怒ってもいいようなものだけれど、実施者がエコという言葉を印篭のように振りかざすために反論を封殺されているんでしょうかね。なんという狡猾で悪辣な連中だろうか。でもまあ僕は刹那主義なので、エコをおろそかにしたがため近日中に地球が大ピンチになろうとも別段どうということはないという乾ききった諦観の持ち主なので、ここはひとつびしっと言ってやるぜ。あのねいいですか。清掃局のちんぴら連中の仕事を減らすために、なんで僕が、清掃局に勤めてもいないこの僕が、沈殿物が内面にこびりついたカゴメトマトジュースのボトルを何度も何度も水洗いするなどといった作業に日々従事しなければならないのでしょうか。月に三千円くらいなら税金を多めに払ってやってもいいからお前らが責任もって最初から最後まで処理しろよと、ちゃんと働けよと、そもそもこれがお前らの仕事だろうと、市民に分別させといてお前らに何の仕事が残っているんだと。本当に。まったく。清掃局なんてぜんぶ民営にしてしまえばいいんだ。

 それと、僕はエコなんつう思想はカルト宗教みたいでキモいと常々思っていて、エコの根底にある「地球を救う」「地球を守る」という視点がもう本当にどうしようもなくウザくて気持ち悪い。人間の分際で、なんで地球より上から目線でものを言っているのだろうかあの人たちは。自我の肥大化高級化いちじるしき危険思想です。そもそもガイアなどというものは人間と比較してはるかにスケールのでっかい、とりつくしまもない存在であり、たとえば人間に対して高みからもっと輝けと囁くような上位の存在であるというのに、そういうマジでパねぇ存在を擬人化矮小化して地球が泣いてるとか傷ついてるとか言い出す人は、自分が神さまにでもなったつもりでいるんでしょう。おめでたいことです。そんな狂人につきあわされてめんどくさいゴミの分別をさせられる僕ら善男善女の身にもなってほしい。僕はべつに地球や人類や僕じしんがどうなろうと知ったこっちゃないし興味もないので、これからペットボトルはラベルもはがさずキャップも取らないまま集積所に放り投げ、両手をかざしてその場で何度も飛び上がり、白目を剥いて舌を出しながらペット・ボトル・ア・ロックンロール・ゴーゴー!などと叫び、集積場の真ん中で自由を勝ち取るための歌を喉が枯れるまで歌い続けることにするゼー。

 と言いたいところですが、そこはそれ、ご近所の視線もありますし、僕がそんな無法を働いて一番割をくうのは清掃局のとんちきどもではなく毎朝ゴミをまとめてくれてるマンション管理のおっさんだったりするので、まあ、僕はこれからも飼いならされた犬のように行政の言うことに従い続けていこうと思いますよ。地球やエコのことはべつだんどうでもよいけれど、近隣住民とは仲良くしてゆきたいものですね。 大事なのは地球よりもご近所さんだ。