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1月22日(木)


 早急に必要なんだけれど、僕の希望にぴたりと合致する誂え向きのものが見つからず難儀している物品が三点ほどあります。それは「液晶モニタ」「本棚」「ステディな関係の巫女さん」です。

 三点の中で最も欲しいのはなんといっても液晶モニタ。条件としては「40インチくらい」「Xbox360に接続できる」「テレビの機能は一切いらない」、これだけ。要するに大きくてゲームが出来さえすればいいので、ムダな受像機能やらわけのわからぬ地デジチューナーやらが内蔵されているテレビなんかは買いたくないわけです。そのぶん高くなるから。
  ネットで検索しても見つかるのは二周りほど小さいパソコン用モニタばかりなんですが、うーん、40インチ級の非テレビ液晶モニタというのは存在しないんでしょうか。詳しい方があればぜひご教示ください。

 でっかいゲームモニタが欲しくなったきっかけは年末年始。実家に帰ったときのこと。居間のテレビが地デジ対応のでっかい液晶テレビに買い替えられていたので、僕は弟の部屋からXbox360をわっせわっせと運んできて居間テレビにつなぎ、『Fallout3』や『ガンダム無双』を絶賛大プレイし、年末年始の特番を新型テレビで観るのを楽しみにしていた実家の家族の顰蹙を大いに買いながら、「わっ、わっ、さすが液晶ださすが大画面だ、潰れ死ぬるゴキブリの肉汁まできれいだ! きらきらとかがやいておる!」などと大興奮したものでした。

 実家での液晶大画面ゲームライフを堪能して東京に戻ってみたところ、僕は愕然としました。何故ならば、わが家のテレビはたったの21型。超人でいったらミスターVTRのおちんちんのあたりに位置するテレビくらいの大きさくらいしかないわけですよ。そのうえヘボいブラウン管なので映像が汚いわ字が滲むわで、まったくもって見るに堪えないありさま。今までこんな画面でゲームをしていただなんて信じられない。
  今の環境でゲームをするとストレスが溜まる一方なので、高くても37型くらいのアクオスやブラビアを買うしかないのかもしれません。テレビ機能はいらないのだがなあ。

 あ、余談ですが、実家の居間で『Fallout3』をしていると、しばしば祖父がやってきて食い入るように画面を見始めるので困りました。これはなんの番組だ、と祖父が訊くので、これは番組でなくゲームで、自分がいまこの操作機を使って画面上の人間を動かしているのだ、という説明をしたら、祖父がきちがいを見るような眼で僕を見るので驚いた(あまりにリアルすぎてそれがゲームの画面だと認識できなかったようです)。

 でも、よく考えれば無理からぬこと。僕が実家の居間でゲームをしていたのは幼稚園のころまでで、その頃は我が家にファミコンすらなく、セガ・エンタープライズ社製の家庭用ゲーム機SG-1000で『パッカー(パックマンのパクリ)』とか『コンゴ・ボンゴ(ドンキーコングのパクリ)』といったドットがガクガクのゲームばかりしていました。その後自室をあてがわれてからは祖父の前でゲームをする機会は絶え、してみれば超美麗グラフィックの『Fallout3』は祖父にとって『パッカー』以来約三十年ぶりに見るゲーム画面ということになり、彼我の差を思うにつけ、両者が同じゲームであるということを理解しろというのがどだい無理な話ではあります。

 『Fallout3』をハリウッド映画と勘違いし、キセルに火を点け腰を据えてテレビを観る態勢をとり始めた祖父は放っておくことにしてゲームを続行。僕が荒廃後の世界で道行くチンピラを射殺するたび祖父がくすくす笑うので(元・マタギの祖父には生物を射殺するという行為になにか感じるところがあるのでしょう)なんだか少しやりにくい。しかし祖父孝行な僕は、喜んで番組を見ている視聴者を単調な攻撃で退屈させぬよう、武器をいちいち持ち替えて撲殺、斬殺、爆殺、殴殺と、バリエーションに富んだ人体破壊を演出するのであった。ある時などは、無軌道な若者と素手で殴りあっていると「鉄砲はないのか……」と視聴者が不安げに呟くので、名演出家である僕は視聴者の要望を取り入れレーザーガンで無軌道な若者を白い灰になるまで焼きつくし、殺しつくし、持ってる荷物を奪いつくしてみせた。やったぜ三光作戦。リスペクト戦中派。視聴者大満足。演出家冥利。みんなしあわせ。実家っていいよね!

 そんなことをしているうちに他の家族も居間に集まってきたので流石に遠慮してゲームをやめたところ、祖父が「今のチャンネルを見ていたのに……」とあからさまに不機嫌になりました。なので僕がもう一度懇切丁寧に「だからこれはテレビじゃなくてゲームで……」と説明すると、祖父が「この孫は、しばらくぶりで帰って来たと思ったら、テレビの中の人間を自分が動かしていると思いこむようなきちがいになってしもうた!」みたいな眼差しで僕を見るので、なんだかどうでもよくなってもう一度Xboxの電源を入れて今度は『テイルズ オブ ヴェスペリア』をプレイし始めたところ、「いい年してあんたはテレビまんが(アニメ)ばかり観て……」と祖母に呆れられた。だからこれはテレビまんがじゃなくて……(以下ループ)。