「地上波デジタルと110度CSアンテナ設置に伴う宅内工事の案内」というのが郵便受に入っていたのですが、なんとも不可解な話です。いま僕は地デジチューナーしか入っていないPCを使って普通にテレビを観ることが出来ているので、マンションの地デジ化はとっくに完了していると思っていたのに。これは一体どういうことだろう。

　東京という都市は怖いところ。なんだかこれは犯罪の臭いがします。
　たとえば以下の説が考えられる。。工事通知は真っ赤な偽物で、これを配布したのは工事業者を装った猟奇犯罪者。純朴な東北出身者の僕は通知を信じこんで業者を名乗る男を室内に請じ入れるのですが、部屋に入ったとたん男は豹変。男のちらつかせる刃渡り16センチの包丁に対抗する手段を何ら持ちえぬ僕は男の欲望のおもむくまま蹂躙され、ここに書くのも憚られるような忌まわしき行為の数々を強要され、肉体的にも傷つけられ、玩具のように弄ばれる。欲望を満たした犯人は遁走、その後行く方しれず。僕は一命は取り留めたものの心に恢復不可能な傷を負い、まともな社会生活を送ることままならず、故郷に連れ戻されて本家の離れの奥の間にしつらえられた二畳の座敷牢に監禁され、焦点の合わぬうつろな目をたたえ茫洋たる暗黒の日々を過ごすのであった。しかしこれには後日談があり、ふだんの僕は外界からの刺激に対してほとんど反応を示さないのだけれど、時折なにかの拍子に体を痙攣させて泡を吹きながら予言めいたことをつぶやく。たとえばドラクエの発売日なんかをピタリと当てたりする。噂は噂を呼び、小売店の店主たちなんかがしばしば託宣を聴きにやって来ては、僕が泡を吹きながらつぶやく「ドラクエ9は更にもっかい延期するぞえ」みたいな託宣を有り難そうに拝聴し「ははー」なんつって平伏する。ファミ通よりも信頼性の高い情報を有り難うごぜえます、なんてことを言って店主たちは本家に感謝のお布施を納めるようになり、それがもとで鳥喰村のヒモロギ家は村で一番栄えるようになったのだそうじゃ。どっとはらい。

　なんだこれ。なにいってんのおれ。話が長くなりすぎてなんだかよくわからなくなりましたが、とにかくこの一件には、犯罪とか、猟奇とか、地域社会の闇の因習とか、そういう匂いがするということを、とにかく僕は言いたかった。

　あまりに恐ろしいのでマンションの管理会社に電話で確認してみました。それによれば、今回の工事は正規のもので、僕が蹂躙されたり、きちがいになったり、これ以上ドラクエの発売日が延期したりすることはないとのことです。なんだそうか。安心した。
　 僕の部屋でなんとなく地デジが観られるというのも、不思議ではあるがありえない話ではないとの由。そう言われてみれば、アンテナレベルが常時低めだったりTOKYO MXが映らず『クイーンズブレイド』の予約録画に失敗する日があったりするので、さもありなん。無意識のうちに電波泥棒のようなことをしていたのかもしれません。なんのことはない、犯罪者は僕のほうだったのか。

　ともあれ、CSがようやく観られるようになるのは喜ばしい。西荻に越して以来ずっと観られずにいたディスカバリーチャンネルとアニマルプラネットとアニマックスをようやく観ることが出来るようになる。今回は奮発してスターチャンネルも契約してみようかな。