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「ウズメです、みなさんおひさしぶりです！」
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「ちーっす、サグメでえす。おひさしぶりー」
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「こ、こ、こんにちは。ぼ、ぼくは清っていうんだな。ぼ、ぼくのお母さんが、し、し、死ぬとき、ぼ、ぼくを枕元に呼んで、こう言うんだな。き、き、清や、お、お母さんが死んだら、お前は、親切な人のところに行って、お、おむすびをもらって、そ、それを食べなさい。だ、だから、ぼ、ぼくは、お、おむすびが、ほしいんだな。お、お、おわり」
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「今日は山下清が取り憑いているみたいね。な、なんてびみょうな……」 |
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「ううっ、なんてかわいそうなお話なのかしら。くすん」
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「さ、サグメちゃん？ いつもと反応がちがくない？ いつもならここは鋭いツッコミを……」
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「あらやだ、どうしよう」 |
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「どうしたの？」 |
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「いま、手持ちのおむすびが無いのよ」
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「……今日は憑依霊に対してやけに親身なのね。いったいどうしちゃったのかしら」
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「でも、ほら、手をお出しなさい清さん。この社務所におむすびはありませんが、アタシがおやつ用として常に懐にかくしもっているピンキーがあります。そのピンキーをたった1粒だけ分けてあげましょう」
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「あ、あ、ありがとう。お、おいしいんだな。こ、こんなにおいしいものを、く、くれるなんて、お、お、お姉さんは、の、野に咲く花のように、す、すてきな人なんだな」
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「まあお上手！ それじゃあ、はい、画用紙と色紙とアラビックヤマトのりもさしあげましょうね。だから、ね。わかるでしょう？ 言っていることがわかるでしょう？ 助け合いの精神、ギブアンドテイク、えてして社会ってそういうもので成り立っているものですもんね」
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「なるほど。山下画伯のちぎり絵が目当てだったのね。うーん、サグメちゃんらしいわ……」
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「……あ、あ、あんたは、へ、兵隊の位でいったら、た、た、大将くらい、ご、ごうつくばりな人なんだな(カランコロンカランコロン)」
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「あっ、逃げたっ！？ せんせいっ！ 山下せんせいっ！」
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「ああっ、どっからどうみても鈍足なのにけっして追いつくことができないという、伝説のキヨシ・ダッシュを目の当たりにすることができるなんてっ！ すごいっ、なにあれ！ ホントに遅くない！？」
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「せんせいっ！ 待ってくださいっ、せんせえー！」
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「せ、せっかくだからアタシも追いかけてみようっと。待ってえー、せんせえー！」 |
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「(カランコロンカランコロン)ぼ、ぼくは、お、おまわりさんは、き、きらいなんだな。だ、だから、に、逃げるのが、うん、い、いちばんなんだな」 |
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「はあっ、はあっ……清さんたらホントにおそーい！ でも追いつけなーい！ ふしぎだわー。わあい、これってたのしー！」 |
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「(カランコロンカランコロン)」 |
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「ぜいっ、ぜいっ……せっ、せんせいっ！ 一枚だけでいいから絵をっ！ 山下画伯ーっ！」 |
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「(カランコロンカランコロン)」 |
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「待ってえー、せんせー！ うふふ、せんせえー！」 |
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