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「わあ、どうしよう、シコメがコナゴナに砕け散って死んじゃったよう！」 |
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「あわてないで。飛び散った破片を残さず拾い集めるのよ」
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「こんな土くれ、今さら集めてどうすんのよう」
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「恐山にある妖怪病院で再生手術を施してもらえば、あるいは……」 |
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「……妖怪病院って『ゲゲゲの鬼太郎』のなかだけの話だと思うよ、あたしは」
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「えっ、そうなの？ ホントに？」
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「そんなの当たり前だよ。マンガの設定をいちいち鵜呑みにするクセ、いいかげんなんとかしなよ。もう２１なんだから」
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「そ、そんなことないわよ。妖怪病院は絶対あるわよ。お、お父さんもあるって言ってたもん。」
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「ぷっ、サンタを信じる幼稚園児かよ。まあいいんじゃない、夢があってさ。くすくす」
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「あっ、笑ったわねこのうどん野郎。いいわよ見てらっしゃい。あの方に妖怪病院の実在を証明してもらうから。オンバラモンギャラモンアセチレンランプソワカ……はうっ」
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「えっ、なになに？ 誰を降霊したの？」
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「……もがーっ！」
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「いたたたたっ！ やめろっ、噛みつくなよっ」
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「あっ、失礼。ボタモチかと思ったもので」
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「このズイタ！ みめうるわしき美少女巫女とボタモチを間違えるボケがどこに……ボケが……はっ、この素敵なおボケあそばし具合……もしや、妖怪まんがの大家、水木しげる大先生であられますかっ？」
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「ボケというものは、結局人を長生きに導き、幸福にするものなんじゃないかナァ」
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「や、やっぱり水木御大だっ！ フハッ！」
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「フハッ！ もうアナタ、驚いたですよ。日本ピラミッドの鏡岩に飛び込んだら、こんなところに出たですよ。アンタ、ここは霊界ですか？」
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「いやその、ここは現世です。せちがらい現世です」
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「あっ、すると水木サンの霊体だけが……」
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「そうなんです。ある馬鹿な巫女が水木センセイの生霊をムリヤリ降霊させようとして……」
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「アリャマタコリャマタ！」 |
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「あ……荒俣？」
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「あぱらちゃのもげーたー！」
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「あ、アチャ……？ いやその、なんかもう御免なさい。つっこめません。かんべんしてください」
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「それにしても、水木サンをワザワザ降霊してなんの話を訊くですか。軍隊でクソの当番をした話でも聞くですか」
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「いや、そういうことではなくて」 |
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「糞と化し 屁と消えてゆく わが身かな 人の形は 夢のまた夢」
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「センセイ、それはいったい」
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「ははははは。水木サンの辞世の句です。プアーン」 |
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「うわーっ、まるで話が進まないよう！ 御大にはむげにつっこめないよう！ ところかまわずおならをするよう！」
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「あっ、このベイビィ。ずいぶんとコナゴナですナ」
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「あっ、はい。実はそれに関することでお呼びだてを」
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「フム、まだ息がありますナ」
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「ほ、本当ですか！？ でもどうして……」
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「はぁ、バラバラになっても生きているということは、これは幽霊族かモグラ人間のたぐいでしょうナ。これはアナタ、このベイビィの親が元に戻す方法を知ってるですよ」
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「うわー、さすが水木センセイ。なんて適切なアドバイスだろう！」
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「むはははは。プアーン」 |
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「あっ、センセイ。もうお帰りに！？ お礼も言ってないうちに……飄々としすぎているにも程があるッ！」
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「……はっ、水木センセイは？ うっ、それになんなの、このにおい。くさいわねえ」
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「今しがた帰られたわ。御大によれば、これこれしかじかなんだそうよ。それよかウズメ姐さん、ふだん何食べてんのよ。尋常じゃないにおいだよ」
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「……シコメの親御さんって。たしかお母さんは亡くなっていて、お父さんも病気がもとで不自由なお体だって聞いているけど」
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「家にいるんでしょ、その親父は。今から会いに行こうよ。早くしないと手遅れになるかもしれないよ」
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「そうね、行ってみましょう。シコメちゃんの家まで」
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「その必要はないぞ」 |
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「……えっ？ 誰？」
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「あっ！」 |
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「ワシがシコメの父親じゃ！」 |
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「ぎょぎょーっ！」 |
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