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「こんばんは、ウズメです!」 |
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「どーも、サグメでえす」 |
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「シコメでーす。こんちばんわ〜」 |
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「今夜はイラク戦線泥沼化に際して、私たちが今回の戦争の是非や戦争行為そのものの持つ意味というものを、神に仕える巫女という立場から、あるいは八紘一宇的日本皇国主義思想の観点からかしこみかしこみ語り合いたいと思います!」 |
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「いや、皇国主義とかはやめようよ。ヤバいって」 |
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「えー! ダメなの?」 |
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「ダメダメ。もっとノンポリな軽いかんじでいこうよ。ラブアンドピースなさ、“よくわかんないけど戦争ははんたいデ〜ス☆” みたいな」
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「ええ〜〜……はーあ。日本の反戦論なんてしょせんそんなもんなのね。テンションさがっちゃった。ふう。もうどうでもいいわ、こんな企画」 |
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「そんなに語りたかったの、八紘一宇を!? ……とにかくさあ、ほら、なんか話そうよ」 |
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「え〜〜、しちめんどくさいわあ。 ……あ、そうだ。あたしたちは霊能力者なんだから、ブッシュさんとフセインさんの生霊を無理くり降霊させたうえで、当事者どうしで納得いくまでイタコ討論させる企画、っていうのはどうかしら。あたし達がダラダラしゃべくるよりもそっちのほうがずっと建設的よ」 |
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「お、いいねえ。じゃ、アタシがブッシュを呼ぶよ。シコメはフセインね」 |
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「あ、くれぐれも本物を降霊しないようにね」 |
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「え、どうして? 言ってることがさっきからめちゃくちゃだよっ」
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「どうしてって……わかるでしょう? 本物を呼んで真面目な議論をシミュレートしたってちっとも面白くないし、それにそんな議論、考えるのがめんどくさいじゃない」 |
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「誰が?」 |
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「これを書いてる人が」 |
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「ああ。そうか。そうだね。そういうことなんだよね。えーっと、じゃあ、誰を呼んでてきとうにボケさせようかなあっと」 |
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「あっ、そうだ。ちょっと耳貸して。こしょこしょこしょ」 |
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「えー! そんなのアタシ降ろせないよー!」 |
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「じゃあ、ヤラセでいいから。アドリブでひとつ」 |
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「……まあ、ぜひにと言うならやってはみるけど、どこかで破綻すると思うな」 |
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「シコメちゃんのほうは、うーん、思いつかないからあなたの判断に任せるわ。頼んだわよ。くれぐれも本物は呼ばないように。書くのがラクな素材を降霊してね」 |
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「あーい」 |
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「えーと、じゃあ、いくよ。ドチリナ・オラショデ・ウントコ・ショ! ジョージ・ウォーカー・ブッシュになーれ! はっ!」 |
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「……もしもし。もしもーし? サグメちゃんの身体に降りてこられたのはブッシュさんですかあ?」 |
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「ち、ち、ちがいますヨー、ワタシはニカウさんですヨー。視力はナント4.0ですヨー」 |
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「きゃー、いやー! ブッシュさんじゃなくて、ブッシュマンを降霊させちゃったー! こいつはとんだブッシュちがいだわー! ズコー!」 |
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「……」 |
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「ズコー! ……ほらほら、どんどん畳み掛けて!」 |
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「うう……こ、コカ・コーラの瓶が降ってきましたヨー。さっそく神サマに届けちゃいますヨー。……ううう」 |
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「うーん、あんまし似てないわねえ。ブッシュマンなんだからもっとこう、別の部族を襲ったり鮮血したたる死体の生き胆にかぶりついたりしてちょうだいよ」 |
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「く、喰らった戦士の魂はわが身に生き続けますヨー、食べた後は残った生首を天日で三日ほど干しますヨー。うんばっばー……って、あのさ、ブッシュマンってそんな部族だったっけ?」 |
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「さあ?」 |
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「あ、あ、あんたが知らんもん、アタシにやらせるなー! っていうか……っていうか出来るかー! いっかいの女子高生がとつぜん振られてブッシュマンのマネなんて出来るかー!」 |
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「もう。アドリブのきかない娘ねえ。せっかく途中まではうまくいってたのに」 |
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「いってないよ思いっきり! だいたいにしてなんなんだよブッシュマンって! どうやって話を拡げるつもりだったのさブッシュマンなんかで!」 |
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「やや、サグメさーん、ブッシュマンなんていう差別語は使ってはいけませんぞ〜!」 |
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「しかも、しかもなんでお前にはムックが降霊してんだよ。まったくもって脈絡がねーよ! フセインとムックはなんの共通点もねーじゃねーかよ!」 |
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「しいていうなら、頭の上のプロペラですぞー」 |
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「しいすぎだよ! お前は一国の大統領になにを強いてるんだよ! 本物どころか影武者にだってついてないよプロペラなんて! ……そういうさ、なんていうの、こういう投げやりな展開。アタシたちがいつまでもはすっぱな歩き巫女あつかいを受け続ける理由っていうのはさ、そういうところにあるんじゃないのかな。もう少しさ、トークのつなげ方とかさ、こんなてきとうじゃなくてさ、もっとちゃんと考えようよお互いに。もっとがんばろうよ。がんばって生きていこうよ」 |
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「なんだか本家の『真剣10代 しゃべり場』みたいなことを言うのね、サグメちゃんたら。アツいわあ。いやーん!」 |
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「ご、ごめんなさい。シコメじつはPTSDっていうこころの病気で、人とのコミュニケーションのとり方とか、そういうのがほんとうは苦手なんですうー。えぐっ、えぐっ。こうやって他人の仮面をかぶることでしか人とうまく接することができないんですうー。ひっく、ひっく」 |
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「……ん?」 |
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「いいよ、泣かないでいいんだよ。だけどさ、他人と関わることっていうのは少なからず、誰でも疲れることじゃないかと思うんだ。でもそういうのって生きていくうえでさけられないことなんじゃないかって思うよ。今言ったみたいに簡単に病気のせいにしちゃうのは、けっこう、シコメ的に逃げてるっていうかさ、そういうところもあるんじゃない?」 |
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「ええっ、なんか本格的に『真剣10代 しゃべり場』みたいなことになってきてない!? ちょっともう、やめましょうよう。もっとホラ、ムックのプロペラがどうとか、そういうユルい話を……」 |
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「もっと変わりたい、自分を変えたいって、そう思うこともたしかにあるよ。でも、無理してまで自分を変えていくことって、本当に必要なのかな? あるがままの自分が本当の自分ってことなんじゃない?」 |
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「ちがう。それはちがうよ。あのさ、あたしバカだからうまく言えないんだけどさ、それって自分の可能性を否定してるってことじゃない? 人間ってさ、常に変わり続けていくものだと思うんだ。そういう考えだと、人間の成長がそこで止まっちゃうと思うんだ」 |
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「や……やあねえ二人とも。なによそのノリ。アツくなっちゃってホントやあねえ。まったく、今回のガチャピンの意気込みはすごいですぞ〜、なーんちゃって! 今の似てた? ムックに声色似てた?」 |
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「真剣じゃない二十代は黙ってて!」 |
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「あれえ、なにこのジェネレーションギャップ!?」 |
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「十代どうしで真剣討論をしているんだから、とうの立った二十代はちょっと黙っててよ!」 |
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「トウの立った、って……ちょ、な、な、なによ十代なんて! ものすごく生意気よ、落合福嗣くらい生意気よ、ハレー彗星も見たことないくせに!」 |
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「は、ハレー彗星?」 |
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「そうよ。あの時は彗星の尾から出る毒ガスから身を守るために、みんなで水を張った桶を使って息を止める訓練をしたりして、すごく大変だったんだから!」
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「知らないと思って滅茶苦茶いうなあ」 |
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「だから、そういう苦労を身をもって知っている二十代の勝ちよ」 |
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「いや、勝ちとか負けとかそういうんじゃなくて」 |
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「二十代の勝ちなの!」 |
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「はあ。じゃあ、十代の負けでいいです」 |
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「当たり前よ、まったく」 |
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「さすが二十代、あなどれませんぞ〜」 |
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「あっ、変わり身はえーなー。このムックは」 |
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「まあ、なんて話のわかる雪男でしょう。さあ、わからずやの十代は放っておいてあっちで一緒にビデオでも観ましょうねー。二十代にしかわからないハイセンスおされ映画でも観るとしましょうねー」 |
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「わたしは『コイサンマン−キョンシーアフリカへ行く−』が観たいですぞ〜」
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「あっ、センスがいいわねえムックは。ニカウさんとキョンシーの競演とか、“ゾンビンガーZ”という頓狂な発想の醸し出すもののあはれとか、あれはやっぱり二十代にしかわからないワビサビよねえ」
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「ワタシは年齢不詳ですが、精神年齢と肌年齢はいつだって二十代ですぞー! 二十代ばんざーい!」 |
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「あらあらムックったら。あなたの場合肌っていうより、単に赤くて汚い毛玉のカタマリじゃなーい! それよりも両手の指を口いっぱいに頬張るクセやめなさい。口の端からよだれがだだ漏れよー!」
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「ややや、失礼いたしまーしたー!」 |
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「やーん! 顔じゅうびちゃびちゃよだれまみれ! もう、ムックったらむしろかわいい! 腕とか組んじゃう! さ、行きましょ行きましょ! さよなら十代のひと! べー!」
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「……」 |
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「図が高いですぞそこの十代のひと! これにこりたらもう二度と二十代のひとに逆らってはイケませんぞ〜」
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「え、ちょっと待って。なにこの締め。ひがみ? 若さに対するひがみでしょ!? 二十代ってみんなこんなに心がねじれてんの? マジキモいよ二十代って。 ……あ、ムックが戻ってきた。ぎゃっ、眼の焦点がちっとも合ってないムックに渾身のグーで殴られた! いたたっ、いたいっ!」
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