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「こんにちは、ちょっとよろしいですか」 |
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「あら、どうぞどうぞ。お上がりになってください」 |
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「あっ、それじゃあ失礼します」 |
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「とりあえずお茶でもどうぞ。シコメちゃん、お茶菓子の用意お願いね」 |
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「あーい」 |
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「あっ、どうぞおかまいなく……ああ、じゃ、いただきます。すみません」 |
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「それであのう、ご用件はなにかしら？」 |
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「あっ、失礼しました。私はその、みなさんが比熊山の祟り石を侵した件に関してですね、ちょっと伺わせていただいたんですが」 |
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「あらまあ、祟りの件で」
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「ええ、それでその、よろしければ早速始めさせてもらいたいんですけど……」 |
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「ええどうぞ、お願いします」 |
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「はい、じゃあ、えー、たーたーりーだーぞー」 |
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「きゃー、いやーん」 |
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「びえー、こんわーい！」 |
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「たーたーりーだー」
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「ばかっ！」 |
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「あいたっ、なにをするんですか」 |
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「あら、サグメちゃんじゃない」 |
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「なにをやってるかと思えばまったく、どうせ祟るならもっとちゃんと祟りなさいよ！ ナメてんの？」 |
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「でも、こちらのお二人には存分に怖がっていただいて」 |
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「二人の表情をよく見ろよ。二時間並んでようやく入場した『魅惑のチキルーム』を見終えた直後のような、そんなびみょうな顔をしてるじゃないか」 |
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「し、しかし」 |
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「しーっ！ サグメちゃん、ちゃんと怖がってあげなきゃ、祟りの係の方に失礼でしょ」 |
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「わざと怖がってやったってしょうがないじゃん。こういうのってこの妖怪のためにもならないよ」 |
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「し、しかし、いまどき『魅惑のチキルーム』に二時間も並ぶことなんてあるんでしょうか？」 |
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「うるさい！ しかも反論のポイントが違う！」 |
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「あのね、サグメちゃんにはね、ディズニーランドに連れてってくれるような彼氏なんかいたコトがないから、そういうことはあまりよくわからないんだよ」 |
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「それはおいたわしいですね」 |
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「男の子と一緒にアミューズメント施設に足を踏み入れる機会が一度もなかったせいで、埼玉ゴズニーランドが実在すると勘違いするような歪んだナゴムギャルに育ってしまって……不憫すぎるわ！」 |
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「うるさいなあ、べつにいいでしょ！」 |
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「まだ若いんです。いい人がきっと見つかりますよ」 |
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「アタシのことはいいんだよ！」 |
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「あいたっ。いたいなあ、あんまりポカポカたたかないでください」 |
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「お前はなあ、だいたい登場の仕方からして間違ってんだよ。なんだよあれは」 |
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「やはりだめですか」 |
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「ダメに決まってるよ。あれじゃ全然こわくないっつーの」 |
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「なにぶん最近スランプで……」 |
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「スランプなんてあんのかよ」 |
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「同僚からは“独眼スランプ”と呼ばれていて」 |
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「今のは聞かなかったことにするから、話を進めなさい」 |
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「ありがとうございます。つまりそれで、私は解らなくなって来たのです。『恐怖』とは何なのでしょう？ 恐怖を感じる引き金は、心のいったいどこにあるのでしょう？」 |
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「人は何を怖がるのか、かあ。うーん、たしかにそれは難しい問題ではあるよね。二人はどう思う？」 |
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「やあ、ぼくミッキー。蒸気船ウィリーに乗って夢も希望もない現実世界に降臨した資本主義とキャラクター文化の申し子だよ！」 |
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「あははは、この気持ちの悪い裏声、何度聴いても鳥肌ものだわあ！」 |
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「こらこら、人の話を聞いてろよ！ ってか、そんなもん憑依させんなよ！ 外ヅラがシコメだからいいようなものの、まかりまちがったら訴えられるって」 |
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「ぼくミッキー！ ぼくミッキー！ アメリカの著作権法はぼくの思いのままだよ！」 |
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「ふふふ、なんて腹黒いネズミなのかしら！ お里が知れちゃうわあ！」 |
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「やめろってば！」 |
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「そういえば、ハウステンボスの経営建て直し支援計画からディズニーが手を引いちゃいましたね。大丈夫なんでしょうか」 |
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「お前もさっきから会話の流れを読まない奴だなあ。ハウステンボスなんかどうでもいいんだよ。あの二人のヨタ話には距離を置いて毅然とした態度を取らないと、いつまでたっても話が進まないんだってば」
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「一つ目なので、そういう距離感がうまくつかめません」 |
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「そういう問題なのかなあ」 |
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「あっ、一つ目のきみ、ぼくの愛犬のプルートにそっくりだね！ キャラクター権の侵害で訴えるよ！」 |
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「あー、何かに似てる似てると思ってはいたんだけど、そういわれればプルートだわ！」 |
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「アンタらホントにプルート知ってんのかよ。犬なんだよ！？」 |
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「訴えられるだなんて、おお、おそろしい。やれおそろしや。アメリカ資本のおそろしさ！ ぶるぶる！」 |
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「あら、意外なところから結論が出たわね。これが『恐怖』というものよ」 |
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「あっ、なるほど。ようし、これからは強引でじぶん勝手な訴訟騒動によってひとびとを恐怖のどん底に突き落としたいと思います！ ありがとうございました！」 |
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「なんじゃそりゃあ」
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「じゃあ、私はこれで帰ります」 |
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「あら、もっとゆっくりしていけばいいのに」 |
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「いえ、今日中にあと三軒ほどたたらなければならないものですから」 |
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「お忙しいのね。じゃあ、またの機会にゆっくり」 |
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「ええ、お礼かたがた、そのうち皆さんをディズニーシーにでもご招待しますよ。それでは！」 |
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「……ディズニーシー？」 |
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「ディズニーシーってなに？」 |
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「ディズニーランド敷地内でCまでいっちゃうとか、そういうことじゃないかしら」 |
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「おおー、さすがウズメ姐さん！ そうだよ、たぶんそれで当たりだよ！」
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「まあね！ これでも流行には敏感なほうだから！」
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「でもー、ディズニーランドのドコでそんなコトをするのー？」 |
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「えーと、ほら、『キャプテンＥＯ』の館内とか」
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「おおー、さすがウズメ姐さん！ 絶対そうだよ！ あそこしかないよ絶対！」 |
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「飛び出すマイケルに見られながら、っていうネバーランド的隠微さがたまらないのよきっと。倦怠期とかには、そういう刺激も必要なのよね」
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「さすがウズメ姐さん！ おとなの意見だ！」 |
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「おとなの意見だ！」
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「まあね！ ようし、こうなったら各自がんばって彼氏を作って、夏休みには『キャプテンＥＯ』でディズニーシーするわよー！」
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「おーーー！！」
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