12月24日(水)

 借りてきた『スターシップ・トゥルーパーズ』を観てみたら、期待通りのボンクラ映画で大満足でした。のっけからヒロインの女性(あまりかわいくない)の嘔吐シーンがあったりとか、歩兵部隊だけで無策のままノコノコ敵軍のシマに乗り込んでって一時間で十万人戦死したりとか、敵ボス宇宙虫の口元が卑猥な造形だったりとか、なかなかのボンクラっぷり。やった、すごい、僕はやっぱりボンクラ映画が大好きだ! サー・イエス・サー!

 というわけで今年もやって参りました「死せる魂の会 盆暗シネマアワード」! 今年上映された映画のなかからではなく、審査員のヒモロギさんがビデオも含めて今年観た映画のなかからパワフルでかっこいい盆暗シネマを選びその栄誉をたたえようという独断専行はなはだしいこの映画賞。今年は審査員多忙のためさほど多くの映画を観ることができず賞の中止さえ懸念されていたのですが、こうして無事ノミネート作品選出にまでこぎつけることができました。それでは珠玉のノミネート作品をどうぞ!




【盆暗作品賞 ノミネート作品】

『キル・ビル』
 本年度盆暗映画レースの最右翼であり、賛否両論相半ばする問題作。刺客のダリル・ハンナが看護婦に変装する際、眼帯を赤十字マーク入りのものに替えていたりするという、そんな盆暗テイストのこまやかな機微がわかる人・わからない人を真っ二つに分けるリトマス紙みたいな映画でありました。かわいそうな井筒監督。わからなかったのね。

『バーバレラ』
 大槻ケンヂさんの歌のタイトルにも使われているジェーン・フォンダ主演のエロSF。しかしエロSFってどんなジャンルだ。『マゾリックス』かよ。
 あらすじはというと、行方知れずとなった科学者を探すため辺境の星に赴いたジェーン・フォンダが開拓者や有翼人やパイプオルガンとまぐわう映画です。どんな映画だ。『パイパニック』かよ。

『激殺! 邪道拳』
 この映画に関しては過去の日記でも紹介しているので内容は割愛。とにもかくにも、麻薬をパクつき電気ショックにもだえる千葉ちゃんを見よ!
 
『スターシップ・トゥルーパーズ』
 昆虫と大真面目に戦争をするという設定だけで笑死必至なのに、虫の棲む惑星にドカドカ攻め入ったうえボスの虫を引っ立ててサイキッカーに虫の心を読ませたりするんです。「怖がってるぞ!」というサイキッカーの言葉を聞いた兵士たちは「イエー!」と狂喜乱舞。ほんとうにアメリカ人って好戦的でばかなのだなあ。そのばかさかげんにほのぼのしてしまう一作。

『太陽を盗んだ男』
 東海村からプルトニウムを盗んだ沢田研二扮する科学教師が自宅のアパートで原爆製造に成功、それを使って日本政府を脅迫しローリングストーンズ来日公演実現をもくろむという、そんな奇天烈なストーリー。登場人物はみんな盆暗ばっかりなのですが、とくに原爆を作ったはいいものの脅迫することが何もなく途方に暮れるジュリーに僕は日本版トラヴィスの姿をみました。おすすめ!



【盆暗監督賞 ノミネート作品】

クエンティン・タランティーノ(『キル・ビル』)
 盆暗映画の金字塔であると同時に、盆暗映画の歴史そのものを体現した大傑作を作り上げた張本人。一人称はオイラ。ムービー・ムービー・ユニバース。あえて見せるぜピアノ線!

石井輝男(『激殺! 邪道拳』)
 タランティーノさえ一目置く、日本盆暗映画界の鬼才というか奇才というかむしろ喜才。どうせなら僕はこの人の撮った『キャシャーン』を観たかった。

北野武(『座頭市』)
 観たはずなのにぜんぜん内容を覚えていないという『座頭市』は惜しくも作品賞からは選考落ち。なにしろ覚えているのはガダルカナル・タカのコントと最後の変なラップだけっていうんだからすごい。これぞ世界のキタノのなせるわざ。たまにサムいぜキタノ・ブルー!

ウォシャウスキー兄弟(『マトリックス』シリーズ)
 『ビースト/巨大イカの逆襲』しかほうふつとさせない本編のほうは実は『リローテッド』までしか観てないのですが、マゾで女装趣味で歌舞伎町大好きなお兄さんに敬意を称してノミネート。離婚訴訟がんばって!



【盆暗男優賞 ノミネート作品】

菅原文太(『太陽を盗んだ男』)
 「九番」を名乗る脅迫犯と対決する刑事役の文太さん、何やったって死なないのこの人。ヘリから落ちても死なないし、銃弾を何発打ち込まれても死なないし、それはもう強い強い。その無敵の強さに加え、扇風機しか持っていない犯人になぜか「日立のビーバーエアコン」を強く勧める盆暗ぶりも併せ持つ無敵のヒーローです。「行くぞ、九番!」はあまりにあまりに名ゼリフ、かっこいい!

千葉真一(『キル・ビル』『激殺! 邪道拳』)
 まったくこのおっさんはすごすぎます。幾つになってもその盆暗ぶりは衰えることを知りません。たとえばこんなインタビュー。
「(殺陣についての話をしていた千葉さん、突然目の前にあるフォークに気がつき)あのね、ここにフォークがあるでしょ?」
「ありますね」
「これに背後の敵が映るんだ。それでフォークをピーンと弾くとクルクルって飛んで敵に突き刺さるわけ。なんの映画だかわかる?」
「さあ?」
「はははは。映画は常にディスカヴァリーだよ。オレの人生もディスカヴァリーだ!」
 ……ええーっ、どういう話の流れだよ千葉さん! せめてなんの映画なのか教えれてくれたって! あなたって本当にディスカヴァリー!

草�g剛(『黄泉がえり』)
 滑舌の悪さが妙に印象的な俳優さんなのでついうっかりノミネート。本編のほうはといえば、ニアデスハピネスなゾンビ哀川翔があばれまわって日本をパニックに陥れる話だといいなあと期待して観たところぜんぜんそんな話じゃなくてがっかり。そもそもそんな期待をするなという話ですか。

ロビン・ウィリアムス(『フィッシャー・キング』)
 夜の公園で全裸になってはしゃぎまわるロビン・ウィリアムス萌え。コンコースでのワルツシーンもいいなあ。「ゴミの中にも美しいものはある」!



【盆暗女優賞 ノミネート作品】

池上季実子(『太陽を盗んだ男』)
 DJのゼロ役。こいつがもう70年代ボンクラ女役を見事に演じきっていて(素でボンクラなのかもしれせんが)、ことあるごとにイライラさせられました。嫌いなのになぜかノミネート。

リース・ウィザースプーン(『キューティー・ブロンド』)
 私生活では絶対に知的美人だと思うんですが、ボンクラ女を演じさせたら天下一品ですよね。単純に僕の好きな女優さんなのでノミネート。

チャン・ツィイー(『英雄』)
 アジア映画を観るとなんかいっつも彼女が出ている気がするのは気のせいなんでしょうか。アジア映画界の竹中直人と呼びたい。いや、竹中直人、あれもいちおう日本人だからアジアの枠内だった。すると竹中直人が日本映画界のチャン・ツィイーということになりますか。そう考えるとなんかちょっと違和感が。

ルーシー・リュー(『キル・ビル』)
 主演のユマ・サーマンよりも日本語がうまく、主演のユマ・サーマンにはないアニメパートまで用意されている役を演じ、主演のユマ・サーマンよりも殺陣が上手いと千葉真一に褒められ、そしてその死にざまがたいへんおもしろい、そんなルーシー・リューさんを盆暗女優賞にノミネートリストに入れないわけにはまいりません。イレチマイナー。みたいないきおい。いきおいだけ。

栗山千明(『キル・ビル』)
『キル・ビル』からもう一方、ゴーゴー夕張役の栗山千明さんがノミネート。かの深作『バトロワ』に出演してかのタランティーノに見出されてしまったという経歴からも盆暗女優臭ぷんぷん。そのうえ『映画秘宝』で「秘宝読者がお願いしたい女優」ランキング上位も常にキープし続けるという新進盆暗女優さん。空とぶギロチンのごとく世界にはばたけ! フェラーリなんてイタリアのゴミだぜ!



【盆暗UMA映画賞 ノミネート作品】

『ジェヴォーダンの獣』
 「ジェヴォーダンの獣」事件大好きっ子な僕としては獣の正体をなんと説明つけるものなのか楽しみにしていたんですが、観てみてがっかり。なんなんでしょうあの外骨格つき乙事主みたいな造形の生き物は。話もぜんぜんつまらなくて、後半は快眠のすえちょっぴり健康にすらなってしまうありさま。盆暗映画の称号を得るに値しない駄作なのですが、他に該当作もないのでしぶしぶノミネート。はっきりいってこんな映画フランスのゴミだゼー!

『トレマーズ3』
 怪物の名前がアスブラスター(「尻ふっとび」)という珍名称だったことしか覚えていないのですが、他に該当作もないのでノミネート。なんだっけ、尻ふっとびをイモ銃でやっつけるんだっけ。どうでもいいや。

『えびボクサー』
 じつは観ていないのですが、他に該当作もないのでノミネート。なんでも本国イギリスでは「えびを虐待している」と動物愛護団体に文句をつけられ、日本のみの公開となってしまったんだそうです。うあー、観たかったなあ。なんでも類似品として『いかレスラー』を作ろうという動きもあるそうですね。ああ、なんて盆暗。こういう話を聞くとしあわせな気分になるよね。



【盆暗冒険映画賞 ノミネート作品】

『パイレーツ・オブ・カリビアン』
 なんかそろそろ飽きてきたので簡潔に。えーと、ジョニー・デップが小汚いかんじでよいと思いました。んー、べつに盆暗というほどの映画ではないですかね。

『フリーク・ハウス』
 『フリークス/怪物團』にインスパイアを受けたらしいですが、その足元にすら及んでいないところが盆暗でよいですね。ミゼット、虫男、腹に顔のある人間、なんでも消化する女、ストリップしながら肌まで脱ぐ女、そんな連中が地味に登場しては地味な恐怖を演出します。

『桃太郎 海の神兵』
 桃太郎がインドネシアで鬼畜米英と戦争するという戦意高揚映画。桃太郎の顔がきもちわるい。むしろうざい。




 ということで六部門のノミネート作品が出揃いました。各賞の発表はまた後日。おたのしみに! ……えっ、泣ける映画が一本も入っていないですって? ははは、やだなあ。イブの夜にPCに向かってこんなくだらねー一人芝居映画賞を開催しているひとりぼっちの僕の背中ほど泣ける映像なんてこの世に存在しませんよー! ジョゼッペ・トルナトーレよりも泣ける映画を撮りたかったら、聖夜の僕の背中を撮れ!