| シコメ |
「でね、僕がどうして『巫女さんおならしない説』を提唱するに至ったのかというと、」
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| サグメ |
「って、おい。前回のラストと違うだろそれは。帰れよこのやろう」
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| シコメ |
「いてっ。わっ、わっ。巫女さんにぶたれた」
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| ウズメ |
「そのガサツな言動……サグメちゃんなのね？ 鈴木央の霊はいつのまにお帰りになったの？」
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| サグメ |
「んー、今しがた。鈴木央ふぜいを連チャンで登場させたところで、打ち切りネタ以外に面白いネタ持ってないし」
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| ウズメ |
「まあ、それもそうね。鈴木央だもんね」
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| シコメ |
「わっ、わっ。巫女さんにぶたれたのは初めてなので、なんだかドキドキします」
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| サグメ |
「問題はこの悪霊をどうやって調伏するかなんだけど、何かいい方法ないかな……あ、そうだ、英霊チョイバルサンを降霊させてモンゴル相撲でけたぐり殺してやろうっと」
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| ウズメ |
「だめよ、それじゃあシコメも死んじゃうじゃない。いい？ この手のヤカラはね、てきとうに話を聞いてやっててきとうにあいづちを打ってやれば、勝手に満足して成仏しちゃうものなのよ。まあ、とりあえず話を聞いてあげることにしましょう」
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| サグメ |
「さっすがウズメ姉さん、オトナだなあ。っつーわけでホレ、何か言いたいことあんだろ、さっさとなにごとかをほざいてさっさとしかるべき闇の黄泉路へ還っていけよ。ホレホレ」
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| シコメ |
「うわーい。じゃあ僕の学説『巫女さんおならしない説』について発表させていただきます。えーとね、あのね、ここだけの話、巫女さんはおならをしないんですよ」
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| サグメ |
「へえ。なるほどね。それはまた、どうしてなのかな？」
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| シコメ |
「はい。理由その一。古今の文献を紐解いてみたところ、巫女さんがおならをしたという記録は一切見られませんでした。ほら、僕って文献至上主義ですから、本に書いていないことはいっさい信用できないゼ、みたいなところがあるんですよ」
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| サグメ |
「……へえ。なるほどね」
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| シコメ |
「で、理由その二。神社の境内でおならをしたら神さまに失礼ですよね。だから境内に生息している巫女さんはおならをいつもがまんしています。その結果、じゃーん、しだいにおならをする機能が退化してしまいましたとさ。はい、これが理由その二ね。ははは。パーペキだ」
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| サグメ |
「……へえ。なるほどね」
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| ウズメ |
「なに勝手なこと言ってるのよ！ そんなわけないじゃない！」
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| サグメ |
「ちょ、ちょっと、ウズメねえさん。話がちがうよ。てきとうに相槌うって追い払うんじゃなかったの？」
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| ウズメ |
「だってこの男、あまりに巫女さんをばかにしてるわ。もう我慢の限界よ。巫女さんだってふつうの人間だもの、おならくらいするに決まってるじゃない！」
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| シコメ |
「まーたまた。やだなあ、僕をかつごうとしたってムダですよ。なにしろ僕の理論はパーペキですから」
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| ウズメ |
「ちょうどいいわ。あなたが憑依しているのは立派な巫女さんの体よ。ちょっとお腹に力をいれてリキんでごらんなさい。一般人となんら変わらない、ほのかに臭いおならが出るんだから」
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| シコメ |
「え〜？ またまた〜」
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| ウズメ |
「いいから早くリキみなさい！」
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| シコメ |
「まあ、巫女さんの命令には絶対服従な僕ですから、リキむだけはリキんでみますけどね。どれどれ、うーん、うーん」
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| サグメ |
「こ、これはインターネット史に残るざんこくシーンだわ。巫女に憑依した管理人がおならを出そうと必死にリキんでいるシーンだなんて、管理人の人格がうたがわれてもまるで文句がいえないよ〜」
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| シコメ |
「ふう、なかなか出ないや。でも、せっかくだから、こういうのってなんかちょっと記念だから、もうちょっとふんばってみようかな。うーん、うーん」
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| サグメ |
「もう見てらんない。あまりにあわれすぎるよ！」
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| ウズメ |
「あっ、サグメちゃん、なにをする気？」
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| サグメ |
「“ドチリナ・オラショデ・ウントコ・ショ！“ おなら妖怪オッケルイペよ我が身に降臨されよかし！」
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| ウズメ |
「あっ、アイヌに伝わるおなら妖怪オッケルイペを降霊させておならの手だすけをしようというのねっ」
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| サグメ |
「オシャマンベー オシャマンベー」
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| ウズメ |
「オッケルイペさまですね？ 屁妖オッケルイペさまの妖力をもって、どうかこの哀れな管理人霊をおみちびきください」
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| サグメ |
「ははは。任せておきなさい。おならに関する問題でわたしに解決できないことはないからね。わたしのモットーは“おならにゃ無限の可能性“なんだよ」
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| シコメ |
「では、さっそくお聞きしますが、巫女さんはおならをするんですか？ 僕はしないと思うんですけど、この人たちはおならをするって言い張るんです。それで僕、ちょっと困ってしまって」
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| サグメ |
「まあ、論より証拠。実際に放屁できるかどうか試してみるがよいだろうね。さあ、とにかく放屁してみたまえ。明るく元気に放屁してみたまえ。わたしのモットーは“もっとポジティブなおならを！“なんだよ」
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| シコメ |
「はい、わかりました。明るく元気に、うーん、うーん」
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| サグメ |
「だめだめ、もっとリラックスして。お腹をよじったりひねったりして、腸内のガスを下のほうに追いやるんだ」
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| シコメ |
「うーん、うーん」
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| サグメ |
「ほらほら、もっとポジティブに。時には少しアグレッシブに。なかなか出そうにない時は、ストレッチでもして体をほぐしてごらん」
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| シコメ |
「ホイッチニ、ホイッチニ、うーん、うーん」
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| サグメ |
「なんだよ、まだ出ないのかよ。もしかして君、才能ないのかよ。おならの」
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| シコメ |
「というか、ここまでやって出ないということは、やっぱり巫女さんはおならをしない生き物なんですよ、オッケルイペさま」
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| サグメ |
「おい、なに言ってんだよおまえ。少なくともわたしの目が黒いうちはなあ、おならをしない哺乳類の存在なんか許すわけねえだろうがよっ。巫女さんだって哺乳類の一種だろうがよっ。おら、とっとと放屁しろよ」
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| シコメ |
「いたっ、いたいなあ。かんじわるいなあ。なんなんだよ。だいたいさあ、おならの妖怪ごときに巫女さんの何がわかるっていうんだ。ふざけんな。巫女さんは絶対おならなんかしないんだよ」
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| サグメ |
「まだ言うかこの野郎！ だいたいなあ、おならをしない人間なんかいねえんだよ。もしそんな奴がいたら、わたしのアイデンティティーが崩壊するっつー話だよ」
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| シコメ |
「おなら妖怪ふぜいがアイデンティティーとか言うなよ。おならのくせしてなにがアイデンティティーだっつー話だよ。巫女さんがおならをしないことも知らなかったくせに」
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| サグメ |
「だからするんだって」
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| シコメ |
「しない！」
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| サグメ |
「する！」
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| シコメ |
「しない！！」
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| サグメ |
「よーし、言ったなこの野郎。いいか、その肛門みたいな耳の穴かっぽじってよく聞いてろよ」
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| ウズメ |
「ああっ、オッケルイペさまっ？ ハカマをそんなにまくって……あっ、いけませんそんな、サグメちゃんのおしりが……やめて、やめてそれだけはっ！」
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| サグメ |
「くらえっ、命の鼓動を聞けっ！ ぶーっ」
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| ウズメ |
「ああっ、そんな、ひどい！ ひどすぎる！ シコメちゃんと違って、サグメちゃんは憑依時の記憶があるんですよ！？ それなのに人前でおならをするなんて、サグメちゃんがかわいそうだわっ」
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| シコメ |
「あああああ」
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| サグメ |
「ははは。これでわかったろう。巫女さんだっておならをするのだ」
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| シコメ |
「おおおおおお……ピキピキピキ」
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| ウズメ |
「オッケルイペさま！？ ヒモロギ霊の様子がなにかヘンです！」
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| シコメ |
「ギニャー！ ガラガラガラ」
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| ウズメ |
「ガラガラって……あああっ！？ シコメちゃんの体にヒビが入ったかと思ったら、音をたてて砕けちゃいましたよオッケルイペさま！ いくらなんでもそんなバカな！」
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| サグメ |
「人はあまりに大きな衝撃を受けると、『トムとジェリー』のようになってしまうことがあるものなのだね。さしものわたしもびっくりしたよ。びっくりしすぎておならが出そうになったよ」
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| ウズメ |
「オッケルイペさま！ お願いです！ シコメを元に戻して！」
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| サグメ |
「善処しようじゃないか。わたしのモットーは“おならで助かるその命“なんだからね。さあ、シコメちゃんの破片を一ヶ所に集めて、うず高く盛ってくれたまえ」
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| ウズメ |
「はい、ぜんぶ集めてうず高く盛りましたわ」
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| サグメ |
「これから破片の山に霊力のこもったおならをふきかける。ウズメくん、危ないから少し離れていたまえ」
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| ウズメ |
「は、はいっ」
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| サグメ |
「いくぞ……ぶーっ！」
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| ウズメ |
「あっ、集めた破片が社務所の外まで飛び散ったっ！ なんてすごい風圧っ！ ……って、ばかっ、いったいなにをしたかったのよ、このおなら妖怪！」
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| サグメ |
「いやその、霊力のこもったおならをふきかければ、元に戻るかな、と思ったんだけど、そういう都合のいい効能はなかったみたいだね。面目ない」
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| ウズメ |
「ああっ、野良ネコが破片をくわえて……ま、待ちなさいっ！ あっ、あっ、ど、どうしよう？」
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| サグメ |
「うーん、打つ手ナシ！」
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| ウズメ |
「シ、シコメちゃーーーん！！！」
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